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金融経済統計のさらなる改善に向けて

―日本銀行の基本的考え方と最近の取組み―

2002年8月8日
日本銀行

はじめに──要旨に代えて

日本銀行では、企業短期経済観測調査(短観)、マネーサプライ統計、卸売物価指数などに加え、金融市場関係や日本銀行の取引・業務に関する様々な金融経済統計を作成・公表しています。

近年、こうした金融経済統計を巡る環境は大きく変化しています。そうした環境変化は様々な側面で生じていますが、重要なものとしては、(1)経済のグローバル化等に伴う金融経済構造等の変化、(2)情報技術革新の進行、(3)報告者負担軽減要請の強まり1等が挙げられます。日本銀行では、こうした環境変化に適切に対応するとともに、統計の透明性と信頼性を一層高めていくことが重要と考え、2000年初2より、統計データの収集から作成・公表に至る一連のプロセスを、全行的に再度点検・検討してきました。今回の検討に際して依拠した「基本的な考え方」と主要な対応3は以下のとおりです。

第一に挙げられるのは、統計データに関する透明性の向上です。こうした視点は、金融調節や金融市場の透明性向上をはじめ各般において、その重要性が高まっています。日本銀行では、透明性の向上を統計の改善を図るうえでも重要な要素のひとつと考えこれを一層推進することとし、この度、(1)幅広いユーザーひいては国民に対するものと、(2)報告者に対するものの二つの視点から、さらなる改善に取り組みました。前者については、必ずしも統計を作成することを主な目的としていない収集データも含め、報告者から継続的に収集・集計している金融経済に関するデータの集計値については、報告者の理解が得られないなどの場合を除き、原則として公表する扱いとし、極力広く社会に還元することとしました。また、統計の具体的な作成・推計方法に関する開示等も一段と充実させました。さらに、報告者に関しては、収集データが多岐に亘り、その全容が捉えにくい場合には、全体的なデータ収集状況について当該報告者に対し分かり易く説明する体制を整えることとしました。

第二に、金融経済構造等の変化を適切に反映した正確・的確な統計を提供することが挙げられます。こうした視点は、金融経済のグローバル化や情報技術革新の進行の下で構造的な変化が加速しているため、統計の提供に際しても、重要性が増していると考えられます。この点では、例えば、伝統的な預金・貸出に対してオフ・バランスの金融商品の相対的な重要性が次第に高まっている状況を踏まえ、こうした新しい商品について、可能なものから統計整備を進めています。また、即時グロス決済(RTGS)方式が導入されたことを背景に、関連データの公表も始めています。このほか、短観や卸売物価指数についても、経済構造の変化を適切に反映させるよう、改定作業を進めているところです。

第三に、多様化・高度化するユーザー・ニーズを的確に把握し、それに応えていく視点を一層重視することです。経済の変化スピードが一層速くなりつつあるなか、「より早く」とのユーザーの根強い要請に配慮して、各種統計の公表早期化を積極的に進めています。また、前述の透明性の向上に伴う統計データの公表範囲の拡大は、多様化・高度化するユーザー・ニーズに応えることにも資するものです。このほか、ユーザーの利便性を高める観点から、ホームページによる統計データへのアクセスの容易化など統計の提供方法に関する見直しも併せて実施しています。

最後に、日本銀行では、統計作成作業の効率化等を通じて、報告者負担の軽減を図ることが極めて重要であると考えています。この点は、従来から重視してきたところですが、今回の機会を捉えて、収集データの必要性に関して、全行的に今一度徹底的な見直しを行い、収集データの削減を進めたところです(日本銀行本店の収集データ項目数の削減率:1割強)。また、データ収集プロセスをより効率化し報告者負担を軽減するために、セキュリティ面にも十分配慮しつつ、IT技術を活用したオンライン収集の対象を着実に拡大しています。この間、報告者等の信頼に応えるべく、統計作成プロセス全般において、統計データに関する機密管理を一層強化することとしました。

日本銀行では、こうした「基本的な考え方」に基づき、金融経済統計のさらなる改善へ向けて様々な統計整備を実施してきました。今後も、自らが作成する統計の改善に持続的に取組んでいく方針です。また、それ以外の金融経済統計についても、自らの経験から学んだノウハウの提供や、統計に関する国際的な協力等を通じて、その改善に貢献していきたいと考えています。

以下では、日本銀行における最近の一連の金融経済統計の整備について、より具体的に紹介します。

  1. 報告者負担軽減の必要性に関しては、過去、何度か指摘されていますが、最近では、例えば、経済団体連合会(1999、2000)等で取り上げられています。また、政府でも、同様な問題意識から、総務庁統計局統計基準部(2000)、総務省統計局(2001)等の調査を実施しています。
  2. 1999年以前における統計改善への取組みに関しては例えば日本銀行調査統計局(1999)参照。
  3. 以下では、日本銀行本店における対応を紹介しています。なお、日本銀行の各支店では、本店の対応を踏まえつつ、各地域の実情等に応じて対応を進めています。