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マネタリーベース統計のFAQ

2013年8月
日本銀行調査統計局

目次

1.マネタリーベース統計とは何ですか。

マネタリーベースは、別名「中央銀行通貨」とも呼ばれ、中央銀行等の通貨性の負債を合計した統計です。具体的には、世の中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と「日銀当座預金」の合計額です。マネタリーベース統計は、合計値並びにその主要内訳項目について、平均残高および月末残高を公表しています。また、関連する統計として、「マネタリーベースと日本銀行の取引」も公表しています(9.を併せてご参照ください)。
なお、マネタリーベースは諸外国(例えばユーロエリア)では「ベースマネー」とも呼ばれています。また、経済学の教科書では「ハイパワードマネー」と呼ばれることもあります。各種金融統計の位置づけや定義などを体系的に取りまとめたIMF金融統計マニュアルでは、マネタリーベースの基本概念について「中央銀行および政府の通貨性負債」であり、「通貨、信用を増加させる基礎となる金融手段」と位置づけています。

マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

2.公表頻度や公表時期はどうなっていますか。

月次のマネタリーベース統計については、毎月第2営業日の午前8時50分に前月の計数を公表しています。また、日次のマネタリーベースは、毎営業日の午前10時に前営業日の計数を公表しています。

3.データは日本銀行のホームページのどこに掲載されていますか。

月次のマネタリーベース統計の最新データは、マネタリーベースに掲載しています。また、日次のマネタリーベースは、日銀当座預金増減要因と金融調節(毎営業日更新)に掲載しています。
月次の時系列データについては、マネタリーベースおよび時系列統計データ検索サイトに掲載しています。

4.データはいつまで遡ることが出来ますか。

平均残高のデータ始期は、1970年1月です。ただし、1981年3月以前と1981年4月以降でデータが不連続となっています(定義の変更については、5.を参照)。また、月末残高のデータ始期は、1996年7月です。

5.過去の時系列データの中でベースの変更はありますか。

マネタリーベース統計については、2000年5月に現在の定義に変更し、1981年4月に遡って新しいベースのデータを公表しました。変更の内容は「日銀当座預金」の計数を「準備預金額」から、準備預金非適用先の保有分を含む日銀当座預金全体に改めたことです。これは、「日本銀行が供給する通貨」という観点からみると、準備預金非適用先(短資会社、証券会社等)の日銀当座預金も含めた方が適当であると考えたためです。こうしたことから、ベースの変更前の1981年3月以前と変更後の1981年4月以降では、データが不連続となっていますが、1981年4月以降についても日銀当座預金の内訳として、準備預金額を公表しているため、旧ベースの系列を最近時点まで伸ばすことは可能です。

マネタリーベース(1981/3月以前)=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「準備預金額
マネタリーベース(現在)=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金

6.日銀当座預金、準備預金とは何ですか。

日銀当座預金とは、金融機関が日本銀行に保有している当座預金です。日銀当座預金が果たしている役割は、主として(1)金融機関相互間や、日本銀行、国との間の決済、(2)現金通貨の支払準備、(3)準備預金の3点です。
なお、「準備預金制度に関する法律」の中で、同法に規定された民間金融機関は、受入れている預金などの債務の一定比率(準備率といいます)以上の金額を日本銀行に預け入れることが義務づけられています。日本銀行と当座預金取引を行なっている金融機関にとっては、日銀当座預金に預け入れられた預金が準備預金としてカウントされます。

7.準備預金の準備率の変更があった場合、どのような調整を行なっているのか教えてください。

準備預金制度は、「準備預金制度に関する法律」に基づいて同法に規定された金融機関に対して、その受入れている預金等の準備預金対象債務の一定比率(準備率)以上の金額を日本銀行に預け入れることを義務づける制度です。日本銀行と当座預金取引を行なっている金融機関にとっては、日銀当座預金の残高がそのまま準備預金としてカウントされる仕組みとなっています。したがって、準備率が変更されれば、この影響によって日銀当座預金の残高が変動します。この影響を過去に遡って調整した計数(日銀当座預金およびそれを含むマネタリーベース合計値)のことを準備率調整済計数と呼び、マネタリーベースの参考として、時系列データを公表しています(掲載場所は、時系列統計データ検索サイトです)。
準備率の調整は、法定準備率が変更された時点で、その時点から過去に遡って、最新の準備率に調整した準備預金額を計算することにより行なっています。具体的な調整方法は以下の通りです。

各月の準備率調整後の準備預金額=各月の準備預金額×(基準時点の平均実効準備率/対象時点の平均実効準備率)

基準時点
準備率が最後に変更された月の翌月(現在は1991年11月です)。
対象時点
各月に適用された準備率が変更された月の前月。ただし準備率が変更された月については当該月を、また、基準時点以降については基準時点(準備率が最後に変更された月の翌月)を、それぞれ対象時点とします。
平均実効準備率
法定準備預金額/準備預金対象債務。

(例)準備率調整の方法(基準時点:xxxx年6月)

(例)準備率調整の方法(基準時点:xxxx年6月)
××××年
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
準備預金額 100 120 80 150 160 120 130
基準時点            
(実行準備率、%)           (1.1)  
対象時点
(実行準備率、%) (1.6) (1.5) (1.2) (1.1)
準備預金額 68 88 58 110 146 120 130
(調整後)              

シャドー 部分で法定準備率変更。

8.季節調整値はありますか。

季節調整値は、マネタリーベース平均残高の合計値を公表しています。マネタリーベース統計の原計数(収集計数を単純に集計したものを原計数と呼びます)には、季節的な変動が含まれているため、実勢の動きを把握しづらいことがあります。このため、原計数(平均残高および前年比)のほかに、季節的な変動を取り除いた季節調整済計数(平均残高および季節調整済前期(月)比年率)も作成・公表しています。
季節調整の詳細な内容等については、「見直し等のお知らせ」に掲載している「マネタリーベースの季節調整値改訂について」をご参照ください。

9.関連統計にはどのようなものがありますか。

密接な関連を有する統計としては、「マネタリーベースと日本銀行の取引」があげられます。「マネタリーベースと日本銀行の取引」は、日本銀行のバランスシートを組替えることにより、日本銀行がどのような取引を行なって資金の供給を行なったかを示しています。言い換えると、中央銀行が供給した日本銀行通貨であるマネタリーベースがどのような取引(金融市場調節<オペレーション>や政府との取引など)によって生じたかを日本銀行のバランスシートの動きを通して示しています。なお、「マネタリーベースと日本銀行の取引」では、各項目の月末残高と期中取引額の計数を公表しています。詳しくは、「マネタリーベースと日本銀行の取引」をご参照ください。

10.マネーストック統計との関係はどのようになっていますか。

マネタリーベース統計と、マネーストック統計の違いは、マネタリーベース統計が、「中央銀行が供給する通貨」であるのに対し、マネーストック統計は、「(中央銀行を含む)金融部門全体から経済に対して供給される通貨」であることです。このため、マネタリーベース統計に含まれる日銀当座預金や金融部門の保有現金(「銀行券」および「貨幣」)は、マネーストック統計には含まれません。

11.マネタリーベース統計はどのような要因で変動しますか。

マネタリーベースは、中央銀行が供給する通貨ですので、中央銀行の取引により変動します。マネタリーベースの残高のうち、銀行券や貨幣は、個人や法人の現金需要の影響を強く受けます(例えば、年末年始には、季節的に増加します)。一方、日銀当座預金の残高は、日本銀行の金融調節等の影響を受けて変動します。

12.分析する際の留意点はありますか。

毎月公表しているマネタリーベース統計では、平均残高、平残前年比、季節調整済前期(月)比年率、および月末残高を公表しています。前年比を利用する場合、前年同月に特殊な要因があると、その影響で前年比が大きく変化する(これを前年の「裏」要因による変動と呼ぶことがあります)ことがあります。
例えば、1999年12月末から2000年1月にかけて、いわゆる2000年問題でコンピューターが誤作動を起こす可能性に備え、日銀当座預金が大幅に増加しました(1999年11月 マネタリーベース平均残高601,247億円<前年比+7.4%>→1999年12月 同686,808億円<同+14.2%>→2000年1月 同721,978億円<同+22.8%>)。この影響から、1年後の2001年1月のマネタリーベース前年比は前年12月に比べ、マイナス幅が拡大しました(2000年11月 マネタリーベース平均残高 635,571億円<前年比+5.7%>→2000年12月 同679,588億円<同-1.1%>→2001年1月 同681,280億円<同-5.6%>)。一方、同月の季節調整済前期(月)比年率(8.参照)は、+19.2%となっており、前月対比でみるとプラス幅が拡大していました。このように、マネタリーベースの動向を分析する際は、前年比のみならず、必要に応じて季節調整済前期(月)比年率も併せてみていくことが有用です。