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2021年の国際収支統計および本邦対外資産負債残高

2022年7月8日
日本銀行国際局

要旨

  • 2021年の経常収支は、第一次所得収支の黒字は拡大したものの、貿易収支の黒字が縮小したほか、サービス収支の赤字が拡大したため、前年対比で小幅の黒字縮小となった(20年15.7兆円→21年15.5兆円)。
  • 項目別にみると、第一次所得収支は、直接投資収益の黒字が拡大したことを主因に、黒字が拡大した。一方、貿易収支は、海外経済が回復する中で輸出が増加したものの、原材料価格の高騰等による輸入の増加幅が大きく、黒字が縮小した。
  • サービス収支の内訳項目をみると、旅行収支が、新型コロナウイルス感染症の影響から、年間を通じて出入国者数が低水準で推移したため、黒字が一段と縮小した。また、その他サービス収支では、通信・コンピュータ・情報サービスで赤字が拡大したことなどから、赤字が小幅に拡大した。
  • なお、やや長い目でわが国のサービス収支の動向をみると、一貫して赤字を計上している。新型コロナウイルス感染症の影響がみられる以前は、外国人による日本での消費(旅行収支の受取)が増加するもとで、赤字幅が縮小してきたが、2020年以降は外国人旅行者の減少と、ITサービスやコンテンツ配信などのデジタル関連の支払拡大等により、再び赤字が拡大している(補論1参照)。
  • 証券投資収益を、やや長い目でみると、受取が横這い圏内で推移する一方、支払は増加基調にあることから、黒字が縮小傾向にある(補論2参照)。
  • 金融収支については、経常収支の黒字に伴って純資産増加となったが、増加幅は縮小した(20年13.8兆円→21年10.8兆円)。項目別にみると、直接投資において純資産増加となった一方、証券投資では純資産減少となった。
  • 2021年の直接投資を目的別に分類してみると、対外直接投資は引き続きM&A型の投資ウェイトが大きい。一方、対内直接投資でも、個別の大型案件の影響からM&Aのウェイトが大きく伸びた(補論3参照)。
  • 2021年末の対外純資産残高は、円安により外貨建て資産の円建て評価額が増加したことを反映して増加し、過去最大となった(20年末355.0兆円→21年末411.2兆円)。対外純資産残高は、主要国の中で引き続き最大規模となっている。
  • 統計基準の点では、2025年に予定されているIMF国際収支マニュアル改訂に向けて、多くの論点について国際的議論が行われており、暗号資産の計上方法などが検討されている(補論4、補論5参照)。

補論目次

補論1
サービス収支の動向
補論2
証券投資収益の動向
補論3
目的別直接投資の動向
補論4
IMF国際収支マニュアル改訂に向けた動き
補論5
暗号資産の国際収支統計上の取り扱いに関する国際的な議論

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行国際局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

国際局国際収支課国際収支統計グループ

E-mail : boj-bop@boj.or.jp