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家計のリスクテイクが資産分布と総産出に及ぼす長期的影響

2018年3月12日
青木周平*1
楡井誠*2
山名一史*3

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

本稿では、家計のリスク資産への投資を促す政策がマクロ経済に及ぼす長期的影響を分析するため、個別ビジネスリスクを完全にヘッジすることのできない不完備市場経済の動学的一般均衡を考える。ビジネス投資資金の調達手段には、企業家自身による出資、預金によって資金調達する銀行、そして個別リスクをバンドルによって低減させる投資信託があり、銀行業務と投信業務にはそれぞれ仲介費用がかかるものとする。まず、Epstein-Zin型選好とCobb-Douglas型生産技術の下で、家計の消費/貯蓄・ポートフォリオ選択と企業の生産活動についての陽表解、および家計資産定常分布のパレート指数が解析的に導出される。さらに、投資信託の仲介コストが低下した場合に、家計ポートフォリオが投資信託にシフトすることを通じて、定常リスクフリーレートが低下し、国民所得と賃金は増大することが定常均衡の比較静学により解析的に示される。最後に、日本経済における家計ポートフォリオと各種資産のリターン/リスク特性に合致するようにモデルパラメータをカリブレートして、投資信託仲介コストの低下がもたらす長期的影響を定量的に評価する。信託購入手数料2%を仮にゼロに低下させると、定常産出は1.3%増加、家計資産のジニ係数は2パーセントポイント増加、そしてリスクフリーレートは15ベーシスポイント低下するという結果を得た。

JEL分類番号
E2; G2

  1. *1信州大学
  2. *2東京大学 E-mail: nirei@e.u-tokyo.ac.jp
  3. *3神奈川大学

日本銀行から

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