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家計の生活意識にみるインフレ予想のアンカー

2015年7月9日
鎌田康一郎*1
中島上智*2
西口周作*3

要旨

本稿は、家計のインフレ予想の性質と中央銀行による予想の安定化について考察する。家計のインフレ予想に関する個票データは、様々な歪みを伴っている。本稿では、正規逆ガウス分布を当てはめることによって、そうしたデータの歪みを除去する。こうして得られる分布は潜在分布と呼ばれ、その性質を調べることによって、家計のインフレ予想の特徴、特に、インフレ予想の期間構造的な関係性があぶり出される。分析結果によると、長期のインフレ予想は、現実の物価動向に左右されにくく、逆に、短期のインフレ予想は、現実のインフレ率によって影響されやすいことがわかった。また、本稿は、中央銀行の政策スタンスが家計のインフレ予想に、どの程度影響を及ぼし得るのかという点についても分析を行った。分析の結果、2013年に日本銀行が導入した物価安定目標や量的・質的金融緩和は、インフレ予想のアンカー強化に寄与したことが確認された。もっとも、家計のインフレ予想が現実の物価動向から全く影響を受けなくなった訳ではない。その意味で、インフレ予想のアンカーを強化する余地は残されている。

JEL分類番号
E31、E52、E58

キーワード
インフレ予想、期間構造、多様性、インフレ目標、インフレ・アンカー、量的・質的金融緩和

本稿の作成に当たり、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂いた。特に、日本銀行リサーチ情報共有セミナーの参加者からは、貴重なコメントを頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、あり得べき誤りは筆者ら個人に属する。本稿の内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局 E-mail : kouichirou.kamada@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局(現・国際局) E-mail : jouchi.nakajima@boj.or.jp
  3. *3日本銀行企画局(現・オックスフォード大学) E-mail : shusaku.nishiguchi@economics.ox.ac.uk

日本銀行から

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