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近年の日本における為替パススルー率の変化:為替パススルー率の変化は価格設定行動の変化を示唆しているか?

2015年6月25日
一瀬善孝*1
原尚子*2
平木一浩*3

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

本稿は、近年における日本の為替パススルー率の変化を実証的に分析したものである。分析は大きく2つに分かれる。まず、時変パラメーター推計の手法を利用して、国内物価への為替パススルー率を推計した。次に、推計された為替パススルー率の変化を、(1)為替レートの変動が限界費用に及ぼす影響度の変化と、(2)限界費用の変動に対するインフレ率の反応度の変化、という2つの要因に分解した。分析の結果からは、2000年代後半以降、国内企業物価と消費者物価への為替パススルー率が上昇したことが示された。このうち、国際産業連関表から示される、この10年間における製造業の輸入依存度の大幅な上昇は、上記の(1)を通じて為替パススルー率の上昇に寄与しているが、より大きなパススルー上昇要因は、(2)の限界費用の変動に対するインフレ率の反応度の上昇であることも明らかとなった。本結果を踏まえると、2000年代後半以降、企業の価格設定行動に変化が生じた可能性が窺われる。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : yoshitaka.ichise@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : naoko.hara@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : kazuhiro.hiraki@boj.or.jp

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