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ドイツの構造改革 ―経済成長・健全財政の両立と課題―

2018年9月26日
国際局 白木紀行*1、新見朋広、有泉友香、西岡慎一*2
*1現・金融機構局
*2現・総務人事局

要旨

近年のドイツでは、他のユーロ圏諸国よりも経済成長率が高く、同時に財政の健全化も進んでいる。これには、種々の構造改革、なかでも、2000年代前半を中心に実施された労働市場改革や年金改革の影響が背景にある。年金や失業保険の給付削減は、財政支出を抑制したほか、高齢者や失業者の就業意欲を引き上げた。雇用の促進・柔軟化策は、企業の採用意欲を高めたほか、求人・求職のマッチング機能を向上させた。こうした効果が相乗的に発揮されて、労働投入の拡大を軸とした経済成長と財政の健全化が実現したと考えられる。ただし、一連の構造改革は、国内で格差拡大を招いたほか、他のEU諸国からはドイツに対してEU全体に配慮した財政拡大を求める声があがっている。ドイツの構造改革の帰趨は、国内の経済・財政の先行きにとどまらず、EUの経済安定化や統合深化への影響の面でも注目される。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
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