このページの本文へ移動

わが国短期金融市場の動向と課題

東京短期金融市場サーベイ(08/8月)の結果とリーマン・ブラザーズ証券破綻の影響

2009年1月26日
日本銀行金融市場局

はじめに

 日本銀行は、わが国短期金融市場の機能向上への取組みの一環として、2007年8月以降の1年間を対象に、サブプライム住宅ローン問題が深刻化する中での短期金融市場取引の動向や参加者構造の変化と、同市場の諸課題への取組み状況を点検するため、「東京短期金融市場サーベイ」を実施した。

 また、同サーベイ実施直後の2008年9月中旬に発生したリーマン・ブラザーズ証券の破綻について、市場参加者への追加ヒアリング等を通じて得られた情報をもとに、破綻直後の短期金融市場への影響のほか、とくに市場機能が大きく低下したレポ市場について今後の検討課題を取りまとめた。ポイントは以下のとおりである。

  1.  わが国の短期金融市場は、2007年夏以降の1年間程度をみると、サブプライム住宅ローン問題が深刻化する中にあっても、その市場規模は概ね横這いで推移するなど、比較的落着いた市場環境を維持した。
  2.  コール市場については、無担保コール市場では、サブプライム住宅ローン問題の深刻化もあって外国銀行の調達額が減少し、代って都市銀行等がシェアを伸ばした。また、一部の大手金融機関の資金放出の積極化もあって、ダイレクト・ディール取引が拡大した。一方、有担保コール市場では特段の変化は窺われなかった。
  3.  レポ市場については、引続き増加したGC取引では、T+0やT+1スタートの取引やターム物の取引が拡大するなど、前向きな動きもみられた。もっとも、課題とされてきた市場参加者の裾野拡大はみられなかった。また、証券会社のポジション縮小を映じてSC取引は大きく減少した。
  4.  この間、比較的安定していたわが国短期金融市場で資金調達を行い、海外に回金したり、為替スワップ等により外貨を調達する動きが積極化した。他方、短期金利デリバティブ取引は、政策金利の変更が見通せない中、低調に推移し、新規参入の動きもみられなかった。
  5.  その後、2008年9月中旬にリーマン・ブラザーズ証券が破綻すると、無担保コール市場では、カウンターパーティ・リスクへの意識の強まりを映じたレート形成が行われるようになった。有担保コール市場では、市場価格の大幅に下落した変動利付国債を中心に担保割れ銘柄が続出したことから、担保に利用できないといった事態が発生した。また、債券・レポ市場ではフェイルが多発し、市場参加者はその処理に追われたほか、取引相手を選別する動きや、フェイル回避、資金繰りの慎重化からレポ取引自体を手控える動きが広がった。この結果、GCレポ・レートが高止まりしたほか、SC取引でも品貸料が著しく上昇する銘柄がみられた。
  6. このような市場の混乱への対応を通じて、レポ取引についてはフェイル慣行の定着・見直しなどの市場慣行の整備や、清算機関の機能改善と利用促進、さらに国債決済期間の短縮等によるリスク管理の強化等、市場全体で取組んでいく検討課題が改めて認識されることとなった。日本銀行としては、個々の市場参加者の経験や認識を共有することを通じ、幅広い市場参加者による課題解決のための取組みに繋げていくことが望ましいと考えており、今後、関係者との議論を深めつつ、これら課題の解決や改善に向けた市場参加者の取組みを積極的に支援していきたいと考えている。

本件に関する照会先

日本銀行金融市場局

千田 電話:03-3277-1244

畠中 電話:03-3277-1246

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融市場局までご相談ください。
転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。