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証券取引のSTP化を巡る動きについて

1999年10月28日
宮田慶一※1

日本銀行から

 本論文の意見や内容は、筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではない。

  • ※1日本銀行金融研究所研究第2課(E-mail: keiichi.miyata@boj.or.jp)

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文(本文、図表)は、こちら (ron9910a.pdf 145KB) から入手できます。なお、本稿は日本銀行調査月報10月号にも掲載しています。

要旨

 証券取引のSTP(Straight-Through Processing)化とは、証券取引において約定から決済に至るプロセスを、標準化されたメッセージ・フォーマットによりシステム間を自動的に連動させることによって、人手を介さずに一連の作業をシームレスに行うことである。近年、情報通信技術の進歩やクロスボーダー取引の急増等を背景に、欧米諸国を中心に、証券取引のSTP化に向けての取り組みが本格化してきている。

 手作業が介在する従来の証券取引事務に比べ、STP化された証券取引事務は、証券会社や金融機関にとって、事務効率化によるコストの削減に繋がるほか、決済期間の短縮等を通じて決済リスクの削減や的確なリスクアセット管理にも資するなど、メリットが大きい。

 わが国の証券取引関係者の間でも、最近になって漸くSTP化に向けての取り組みが散見されるようになってきているが、欧米諸国に比べると立ち遅れは否めない。こうした状況が続くと、STP化に向けてのグローバルな取り組みに、わが国の証券市場の制度や慣行が反映されず、市場参加者にとって将来多大な調整コストが必要となる可能性がある。また、STP化への対応の遅れを放置した場合、わが国の証券会社やカストディー業務を行う金融機関が、国際的な証券取引業務からの退出を余儀なくされる惧れがあるほか、わが国証券市場の国際競争力の低下にも繋がりかねない。このように、STP化は、証券市場の魅力や関係者の業績に直結する問題と言えるため、わが国としても証券会社や金融機関を中心に、標準化の帰趨や海外の業界動向を注視しつつ、STP化に前向きに対応していくことが必要であろう。

 本稿では、こうした問題意識に基づき、STP化に向けての取り組みを、事実上の標準(de facto standard)を狙う近年の欧米企業の動向、およびISO(国際標準化機構)における公的な標準(de jure standard)を巡る動き、の2つの観点から紹介する。

以上