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各地域からみた景気の現状(2024年1月支店長会議における報告)

2024年1月11日
日本銀行

今回の支店長会議における報告を総括すると、各地の景気は「持ち直し」、「緩やかに回復」、「着実に回復」となっている。ただし、1地域では「持ち直しのペースが鈍化」としている。前回の支店長会議開催時点(2023年10月)と比較すると、全9地域中2地域で総括判断を引き上げ、1地域で引き下げている(参考参照)。

能登半島地震の被災地に所在する支店からは、判明している被害状況の報告のほか、地域の金融機能の安定維持に努めつつ、今後の経済面への影響を注視していくとの発言があった。

主な需要項目等別にみると(注)設備投資については、建設コスト高等による先送り・縮小、発注先の人手不足等による工事・納入の遅れが一部でみられるものの、企業収益や業況感が改善するもとで、EV需要やIT関連需要の中長期的な拡大期待を踏まえた能力増強投資、省力化・デジタル化や環境対応投資、物流の効率化投資など、企業の投資姿勢は積極的であるとの報告が多かった。個人消費(インバウンド需要を含む)については、インバウンド需要が好調を持続するもとで、年末・年始の旅行需要や宴会需要が好調となっており、サービス消費が増加しているとの報告が多かった。ただし、人手不足による需要の取りこぼしも引き続き幅広く報告された。この間、財消費については、都市部の百貨店等における高額品販売が好調を持続する一方、物価高による実質賃金の減少が続くもとで、スーパー等を中心に消費者の節約志向の高まりを懸念する声が増加しているとの報告があった。また、一部で、家電販売の弱含み、自動車の新規受注の鈍化の動きも報告された。輸出・生産については、海外経済の回復ペース鈍化を受けて、電子部品や素材などが低調となっている一方で、供給制約の影響緩和に支えられて自動車関連が高水準となっており、全体としてみると横ばい圏内との報告が多かった。また、グローバルなIT調整の影響を受けてきた電子部品や半導体製造装置等で需要底打ちの兆しがみられるとの報告も複数あった。

雇用・賃金面では、多くの地域から、労働需給の引き締まりや、企業の人手不足感の強まりが報告された。本年の賃金改定に関しては、一部の大企業において、昨年並みあるいはそれ以上のベースアップを伴う賃上げ方針を既に表明する動きがみられるもとで、地域によって濃淡はあるものの、地方でも昨年よりも幾分早いタイミングで賃上げ機運が醸成されつつある。ただし、競合他社の賃上げ動向等を見極めたいとして、現時点では賃上げ率等を固めていない先が多いほか、中小企業を中心に、収益面の制約から慎重さを崩さない先も少なくないなど、賃上げの広がりや程度等については不確実性が高いとの報告が多かった。

企業の価格設定面では、既往の原材料コスト上昇分を転嫁する動きが続いているが、そのペースは鈍化しているとの報告が多かった。また、値上げの抑制や一部商品の値下げなど、消費者の節約志向の強まりに対応した価格設定行動がみられるとの報告が複数あった。一方で、人件費の上昇を念頭に置いた値上げを実施ないし検討する動きもサービス業等で徐々に出てきているとの報告があった。


(参考)

各地域の景気の総括判断と前回との比較
【23/10月判断】 前回との比較 【24/1月判断】
北海道 持ち直している 不変 持ち直している
東北 持ち直している 不変 持ち直している
北陸 緩やかに回復している 不変 今後、令和6年能登半島地震の影響を注視する必要があるが、緩やかに回復している
関東
甲信越
緩やかに回復している 不変 緩やかに回復している
東海 持ち直している 右上がり 緩やかに回復している
近畿 一部に弱めの動きがみられるものの、持ち直している 右下がり 持ち直しのペースが鈍化している
中国 緩やかに回復している 不変 緩やかに回復している
四国 持ち直している 不変 持ち直している
九州・沖縄 緩やかに回復している 右上がり 着実に回復している
  • (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。