このページの本文へ移動

地域経済報告 —さくらレポート— (2011年4月) *

  • 本報告は、本日開催の支店長会議に向けて収集された情報をもとに、支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2011年4月11日
日本銀行

目次

  • <参考1>地域別金融経済概況
  • <参考2>地域別主要指標

地域からみた景気情勢

最近の景気情勢については、多くの地域で東日本大震災(以下「震災」という)後の生産活動の障害等を背景に、慎重な見方が広がっている。

地域別にみると、東北では「社会インフラ、生産・営業用設備の棄損が生じたことから、経済的にも甚大な被害が生じている」ほか、関東甲信越や東海でも、「震災の影響に伴う生産活動の大幅な低下等から厳しい状況にある」等の見方となっている。また、その他の地域でも、サプライチェーンにおける障害や消費マインドの慎重化等から、「震災の影響が生産面などにみられ始めている」、「停滞色がみられ始めている」等の慎重な見方となっている。

表 地域からみた景気情勢
  11/1月判断 前回との比較 11/4月判断
北海道 持ち直しを続けているものの、このところ足踏み感もうかがわれる 右下がり 足もと、震災に伴う一連の影響から下押し圧力がみられる
東北 製造業を中心に改善の動きに一服感がみられるものの、全体としては持ち直している 右下がり これまで持ち直しの動きを続けてきたが、震災により、太平洋側を中心としたきわめて広範な地域が被災し、社会インフラ、生産・営業用設備の棄損が生じたことから、経済的にも甚大な被害が生じている
北陸 持ち直しの動きが弱まりつつある 右下がり 震災の影響の広がりから、このところ停滞感がみられており、企業の業況感や家計のマインドが慎重化している
関東甲信越 緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる。また、地理的および業種間のばらつきも残存している 右下がり 震災の影響に伴う生産活動の大幅な低下等から厳しい状況にある
東海 足踏み状態となっている 右下がり 持ち直しつつあったが、足もとでは悪化しているとみられる
近畿 緩やかな回復基調にあるものの、このところ足踏み状態となっている 不変 緩やかな回復基調にあり、昨秋からの足踏み状態を脱しつつあったが、足もとでは震災の影響が生産面などにみられ始めている
中国 回復の動きに一服感がみられる 右下がり 震災の影響を受けて、生産活動の制約や個人消費関連での自粛ムードの広がりなどから、停滞色がみられ始めている
四国 持ち直しの動きに一服感がみられる 右上がり 持ち直し基調にある。なお、先行きにかけては、今回の震災によって、生産活動のほか企業や家計のマインド等が短期的には下押しされる可能性が高い
九州・沖縄 一部に駆け込み需要の反動がみられるものの、全体としては緩やかな回復基調を維持している 右下がり 緩やかに回復してきたものの、足もとでは震災による供給面の制約等の影響がみられている
  • (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、右上がりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。

公共投資は、7地域(東北、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)からは「減少している」との報告があった。ただし、北海道からは「前年比減少幅が縮小している」、関東甲信越も「被災地域の一部では復旧需要がみられ始めており、減少幅は縮小しつつある」との報告があった。

設備投資は、6地域(北海道、北陸、東海、近畿、四国、九州・沖縄)からは「持ち直し」または「持ち直しつつある」との報告があった。一方、残りの3地域(東北、関東甲信越、中国)からは「投資計画を見直す動きがみられるなど弱めの動きになっている」、「現状の計画は今後大幅に見直されることが想定される」等との報告 があった。

個人消費は、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)からは、震災後の消費マインドの慎重化等を背景に、「弱含んでいる」等と報告があった。この間、2地域(近畿、四国)からは、「持ち直し」等との報告があったが、四国は「先行きの商品仕入や家計マインド等に影響が及ぶことを懸念する向きが多い」点にも言及した。

品目別の動きをみると、大型小売店販売額では、多くの地域から非常用物資や防災関連製品の売上増加がみられたものの、消費マインドの慎重化を背景に不要不急品の支出を手控える動きがみられているとの報告があった。乗用車販売については、持ち直し等の動きを報告する地域(近畿、四国)と、震災の影響や政策効果終了後の反動減などから減少の動きを報告する地域(北陸、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)がみられた。家電販売でも、東海、四国からは持ち直しの動き等の報告があったが、多くの地域からは震災の影響や政策見直しの反動減等の動きについて報告があった。旅行関連需要では、東北からは被災および交通網の寸断等による観光需要への深刻な影響が報告されたほか、他の地域からも外国人観光客の減少や国内観光を取りやめる動きが広がっているとの報告があった。

住宅投資は、6地域(北海道、東北、東海、近畿、四国、九州・沖縄)からは「持ち直している」または「一部に持ち直しの動きがみられる」等との報告があった。もっとも、3地域(北陸、関東甲信越、中国)からは、「震災後は、住宅資材の供給制約などから一部に遅れがみられる」等との報告があった。

生産については、震災の影響による生産設備の毀損、サプライチェーンの障害、電力使用の制約等を背景に、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)からは「大幅に減少している」または「減少に転じている」等との報告があった。また、残りの2地域(近畿、四国)も「震災の影響がみられ始めている」、「持ち直し基調にある。ただし、今後、震災の影響によって、短期的には生産活動の低下が見込まれる」と言及しているなど、全地域が震災の影響を指摘した。

業種別の主な動きをみると、ほとんどの地域から、自動車・同部品がサプライチェーンの障害を背景にした部品調達の困難化等から、「操業度が大幅に低下している」等との報告があった。また、東海、四国からは、電気機械・電子部品、一般機械などで「海外向けを中心に増加している」等との報告があった一方で、複数の地域からは「部材の調達難の影響から生産調整を行う動きもみられる」等の報告があった。この間、被災地向け需要に対応するため、複数の地域(北海道、九州・沖縄)から、食料品における生産水準引き上げの動きについて報告があった。

雇用・所得環境については、前回同様、多くの地域からは引き続き厳しい状況にあるが、厳しさの度合いが緩和している等との報告があった。もっとも、複数の地域(関東甲信越、東海、中国)からは、先行き「生産減少等の影響が懸念される」との報告があった。

需要項目等

表 需要項目等
  公共投資 設備投資 個人消費 住宅投資 生産 雇用・所得
北海道 前年比減少幅が縮小している 持ち直している 足もと、非耐久消費財等を中心に不要不急の支出を抑制する動きがみられる 持ち直しの動きが鈍化している 足もと減少している 雇用情勢は、緩やかに持ち直している。雇用者所得は、常用労働者数、一人当たり名目賃金ともに前年を上回っており、改善を続けている
東北 前年を下回った 4年振りに前年を上回る計画となった。もっとも、今回の震災により現状の計画は今後大幅に見直されることが想定される 緩やかな持ち直しの動きを続けてきたが、今回の震災により営業用設備や物流網に甚大な被害を受けたことに加え、個人の移動手段もガソリン不足等から大きな制約を受けたため、深刻な影響が生じている 引き続き低調に推移しているものの、持家を中心に持ち直しの動きがみられている 緩やかに増加していたが、今回の震災の影響から、足もと大幅に減少している 雇用情勢をみると、改善に向けた動きがみられている。雇用者所得は、前年を下回った
北陸 北陸新幹線関連の大口工事の発注が一巡したこともあって減少している 製造業を中心に緩やかに持ち直している 震災による消費自粛ムードもあり、一部の生活必需品を除き、全体として弱含んでいる 持家を中心に下げ止まっているが、建材の調達難から建設時期がずれ込む状況もみられている 増加基調にあったが、震災以降は部材の調達難が影響して、一部では生産調整を行う動きもみられている 雇用情勢をみると、有効求人倍率が緩やかに上昇を続けるなど厳しさが和らいでいる。雇用者所得は、所定内給与は前年並みにとどまっているが、特別給与は低水準ながら持ち直している
関東甲信越 茨城県、栃木県、千葉県などの被災地域の一部では復旧需要がみられ始めており、減少幅は縮小しつつある 震災後は、投資計画を見直す動きがみられるなど弱めの動きになっているとみられる 震災後は、消費者マインドの慎重化に加え、電力使用の制約もあって、大幅に減少しているとみられる 震災後は、住宅資材の供給制約などから、一部の新築着工に遅れがみられている 震災発生後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力使用の制約などから、大幅に減少している 雇用・所得動向は、引き続き厳しい状況にある。震災に伴う生産活動の減少などから、一部の非正規雇用者では自宅待機等を余儀なくされる動きもみられているなど、先行きの所得面への影響を指摘する声が聞かれ始めている
東海 減少している 緩やかに持ち直しつつある 震災の影響から、足もと弱含んでいるとみられる 低水準ながら一部に持ち直しの動きがみられる 震災の影響から、足もと自動車関連を中心に大幅に減少しているとみられる 雇用・所得環境は、今後、生産減少等の影響が懸念される
近畿 減少している 企業収益の改善が続く中で、緩やかに持ち直している 各種の駆け込みと反動の動きを伴いながら、緩やかに持ち直しつつある 緩やかに持ち直しつつある アジア向け輸出の持ち直しなどから、再び増加に転じつつあったが、足もとでは震災の影響がみられ始めている。この間、在庫は低水準で推移している 雇用情勢をみると、雇用面にはなお厳しさを残しながらも、労働需給は徐々に改善しつつあり、賃金も下げ止まってきている。雇用者所得は、前年比マイナス幅が縮小してきている
中国 減少している 持ち直しの動きが続いていたが、一部に計画の遅延や見直しの動きが出始めている 消費マインド後退の影響がみられている 足もと下げ止まっていたが、一部に計画の遅延や見直しの動きが出始めている 震災の影響による資材や部品調達の困難化等から生産活動が滞る動きがみられ始めている。今後、自動車のみならず幅広い業種において、資材や部品調達の困難化から生産活動に影響が生じる懸念がある 雇用情勢は、厳しい状況が続く中、製造業を中心に新規求人の動きがみられており、幾分改善してきている。雇用者所得は、全体として企業の人件費抑制等を背景に弱い動きが続いているが、所定外給与は増加している。もっとも、先行きは生産活動制約の影響が懸念される
四国 減少している 持ち直しつつある 全体としては低調に推移しているものの、一部に持ち直しの動きがみられる。こうした中、今回の震災発生を受け、非常用物資や防災関連製品の売上が増加している一方、先行きの商品仕入や家計マインド等に影響が及ぶことを懸念する向きが多い 低水準ながら、一部に持ち直しの動きがみられる 持ち直し基調にある。ただし、今後、震災の影響によって、短期的には生産活動の低下が見込まれる 雇用情勢は、引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。雇用者所得は、概ね下げ止まっている
九州・沖縄 減少している 持ち直している 震災以降、旅行手控え等の動きがみられ、全体として幾分弱含んできている 低水準ながら緩やかに持ち直している 震災以降、食料品、化学等の一部が操業度を引き上げる一方、部材調達難から操業度が低下する先がみられており、全体としては減少に転じている 雇用・所得情勢は、全体としてはなお厳しい状態にあるが、幾分改善の動きがみられている

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局経済調査課地域経済グループ

Tel : 03-3277-2649