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全国11支店金融経済概況 (1998年10月)

1998年10月26日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気は悪化し、低迷を続けており、企業の景況感や消費者の心理も依然として冷え込んでいる。すなわち、公共投資が補正予算分の発注本格化から前年を上回っているものの、個人消費が生活防衛意識のさらなる高まりを映じ低迷の度合いを強めているほか、住宅投資も引続き不振を託っている。また、設備投資は、企業業績の大幅な悪化等を眺め一段と減少しているほか、企業の生産も、個人消費を中心とした内需の不振から減少傾向に歯止めがかかっていない。この間、雇用情勢も失業率が上昇するなど一段と厳しさを増している。

公共投資については、公共工事請負金額は総合経済対策に伴う補正予算分の発注本格化等から前年を上回っているが、目下のところは、建材等関連業界への波及効果は一部に止まっている。

個人消費は、大型小売店等では、雇用・所得環境の悪化を映じた消費者の生活防衛意識の一段の高まりから、来店客数が減少する中で高額商品、耐久消費財はもとより、食料品、家庭用品等生活必需品の販売も低調となっているなど、低迷の度合いを一層強めている。この間、本州等から道内への入り込み客は、団体旅行やビジネス客の落込みを主因に6月以降前年を下回っている。

住宅投資は、ユーザーの住宅取得意欲の減退等から、新設住宅着工戸数は前年割れの状態が長期化している。

企業収益については、生産減少や個人消費の低迷等を背景に一段と悪化傾向を示しており、10年度上期の経常利益は前年度比大幅減益となる見通し。

設備投資は、非製造業を中心に足許の業績悪化等を眺めここにきて投資額を下方修正する動きが散見されており、10年度の計画は低水準の前年度をさらに下回る計画となっている。

生産動向をみると、自動車部品で欧米向け出荷増から底固い生産を続けている。しかしながら、個人消費の低迷を映じ高炉(自動車向け特殊鋼)、電子部品(パソコン関連)、紙・パ(印刷用紙、段ボール原紙)、食料品(牛乳、ビール、水産加工)で生産が減少しているほか、鋳鍛鋼製品・機械関連でも国内設備投資の減少を映じ低操業を余儀なくされている。この間、建設資材関連(木材、セメント、生コン、電炉、亜鉛鉄板等)では、電炉等で公共工事向け受注に動意が窺われ、生産水準を引き上げてきているものの、大方の業種では民間建設需要の不振が響き低水準の生産に止まっている。この結果、道内企業の生産は全体として減少傾向にある。

雇用面をみると、企業の人員リストラの広がり等を背景に有効求人倍率が低下傾向にあるうえ、6〜8月の失業率が5%を超えるなど、一段と厳しさを増している。

物価動向をみると、道内消費者物価指数は前年を下回って推移している。この間、地価は、住宅地、商業地ともに低下している。

金融面をみると、預金では、個人預金が底固く推移しているほか、法人預金も公共工事前渡金の流入もあって、全体の伸び率は改善している。一方、貸出は、企業からの運転・設備需資が引続き低迷しており、伸び率が低下している。なお、道内における金融機関の貸出態度は、金融機関を取り巻く環境の厳しさや企業業績の悪化等を眺め一段と慎重になっている。

以上

東北地区金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行仙台支店

東北地区の景気は後退を続けている。企業マインドもさらに悪化している。住宅投資、設備投資が減少を続けているほか、公共投資も公共工事請負金額は前年を上回ってきてはいるものの、関連業界への波及は一部に止まっている。個人消費は耐久消費財の一部に動きがみられるが、総じてみれば低調の域を脱していない。

企業の生産活動も、こうした末端需要の不振を反映して、多くの業種で減産を継続ないし一段と強化している。企業倒産も引き続き高水準にあり、雇用情勢も悪化を続けている。

この間、本年の水稲の作柄は、低温や日照不足等からやや不良となっており、9月後半の台風の影響でさらに悪化することが懸念されている。

最終需要動向をみると、個人消費については、百貨店売上高が、悪天候による客足の落ち込みもあって衣料品を中心に低調に推移している。家電販売は、パソコンがウィンドウズ98の投入効果から持ち直しているほか、デジタル製品にも動きがみられるが、全体としてみると主力の白物家電を中心に低調の域を脱していない。乗用車販売も、小型RVなど一部の新型車に動きがみられるものの、消費者の慎重な購買スタンスに変化はみられない。

公共投資は、地域によってばらつきはあるものの、上期前倒し発注や6月補正予算の執行が徐々に進んでいることから、公共工事請負金額は全体としては前年を上回ってきている。

住宅投資は、住宅着工戸数が持家、貸家とも減少を続けている。

この間、10年度の設備投資計画をみると、製造業、非製造業とも、末端需要の不振や業績の悪化から、大方の業種で投資を抑制しており、前年度を大幅に下回る計画となっている。

主要製造業の受注・生産動向をみると、電気機械では、パソコンがウィンドウズ98対応機の投入効果から生産水準を幾分引き上げているものの、その他の幅広い品目(半導体メモリー、OA機器、電子部品、通信機器)では、内需不振から減産を継続ないし強化している。

輸送用機械では、一部ではモデルチェンジ効果から受注が上向いているが、内需低迷から、全体としては低操業を継続している。

消費関連業種では、衣料品がアパレルメーカーからの受注量減少を背景に一段と生産水準を引き下げているほか、時計、ミシン等も減産を継続している。食品でも、缶詰が、受注の増加から生産水準を幾分引き上げる一方、冷凍・レトルトは、量販店やコンビニ向けの受注減少から、また練製品は、土産品販売の不振から、それぞれ生産水準を幾分引き下げている。紙・パ(新聞用紙、印刷用紙、段ボール原紙)でも、需要の落ち込みから、減産をさらに強化ないし継続している。

設備関連業種では、国内自動車・家電メーカーを中心とした企業の投資意欲後退やアジア向け輸出の不振から、生産水準を引き下げているほか、半導体製造装置でも、半導体メーカーの設備投資先送りの影響から、低水準の生産を継続している。

建設関連業種(鉄鋼、窯業・土石、一般製材・合板)では、民間建設関連投資が減少しているほか、公共投資関連受注も、一部に持ち直しがみられるものの、全体としては不振の域を脱していないことから、低操業を続けている。

10年度の企業の売上・収益動向をみると、製造業が減収減益を見込んでいる。非製造業は減収の見通しながら、収益は新規出店やリストラ策の効果を見込んで前年を上回る見通しにある。

雇用情勢については、事業主都合離職者が増勢を強める一方、新規求人数が幅広い業種で一段と減少していることから、有効求人倍率は低下傾向にある。所定外労働時間も、企業活動の鈍化を映じて減少を続けている。

企業倒産をみると、建設業や卸・小売業での多発などから件数、金額とも高水準で推移している。

金融面をみると、預金はこのところ個人の伸びが鈍化しているほか、法人、公金ともに引き続き低調に推移している。また、貸出も需資の低迷から低調度合いを強めている。

以上

北陸地区金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行金沢支店

北陸地区の景気は、最終需要の低迷から生産減少が続くなかで、企業マインドや雇用・所得環境も悪化するなど、引き続き後退色の強い状況にある。

最終需要面の動きをみると、個人消費は、消費者の支出マインドが依然慎重化していることから、全般に低迷が続いている。すなわち、百貨店売上げではミセス向け婦人服や紳士物スーツなどを中心とした値嵩品が依然低調なほか、乗用車新車登録台数も前年割れの状況が続いており、家電販売も白物家電などを中心に低調に推移している。観光面をみると、温泉旅館では団体・法人客のほか、個人・グループ客も景気低迷を映じて減少傾向にあるなど、全般に低調裡に推移している。

設備投資については、国内需要の低迷、東アジア諸国の経済調整長期化や企業収益の悪化などを映じて製造業を中心に減少傾向が続いている。

輸出については、欧米向けは工作機械や電子部品(携帯電話用部材)などを中心に引き続き堅調に推移しているが、アジア向けが合繊織物や繊維機械を中心に減少しているため、全体ではこのところ頭打ち気味に推移している。

公共投資は、このところ増加傾向に転じており、今後も国や県の大型経済対策の効果から底堅く推移するものとみられる。一方、住宅投資は、新設住宅着工戸数の前年割れが続くなど、低水準で推移している。

こうした最終需要のもと、生産動向をみると、工作機械、電子部品(携帯電話用、パソコン関連の部材)、OA機器では欧米向け輸出の増加や新製品投入効果から高めの操業を維持しているが、主力の合繊織物やアルミ建材をはじめ、建設・繊維・プレス機械や化学(医薬品、界面活性剤等)など多くの業種では、長引く内需低迷の影響やアジア地域からの受注減少を映じて、操業度の引き下げや低操業を続けている。

この間、雇用面をみると、新規求人数が製造業や建設業などを中心に急減しており、有効求人倍率(含むパート)も一段と低下している。また、雇用者所得も、生産の弱含み傾向などを反映して所定外労働時間が前年割れを続けている中、所定外給与を中心に低迷している。

金融面をみると、預金は、個人預金では、定期性預金が小幅の伸びに止まっている一方、流動性預金が堅調な伸びを維持しているため、全体としては底固く推移している。一方、法人預金は、企業業績の低迷や財務リストラ圧力等を映じて、依然低調に推移している。

貸出は、個人向けが消費者ローンの低迷や住宅ローンの伸び率鈍化から、低調な伸びとなっている。また、法人向けも、需資が全般に低迷しており、中でも設備資金については、企業の投資抑制の動きを反映し、低調度合いが強まる傾向にある。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、既往最低圏で推移している。

以上

神奈川県内金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済は、低迷する最終需要の下で生産調整の継続から、企業収益の悪化や個人所得の減少傾向が続いているなど、極めて厳しい状況にある。すなわち、最終需要面をみると、公共投資は上期前倒し発注の効果が見られるが、住宅投資が減少傾向にあるほか、個人消費も停滞基調を脱していない。この間、輸出がアジア向けを中心に減少しているほか、設備投資も抑制色を強めている。こうした状況下、県内企業の生産は、在庫調整が遅れ、在庫水準がなお高いことから、大方の業種で大幅な減産が続いている。このため、企業収益は悪化傾向を続けている。また、雇用者所得が減少しているほか、労働需給面でも依然緩和した状態が続いている。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、昨秋来の消費者心理の慎重化がなお解きほぐされていないうえ、個人所得の落込みもあって低迷を続けている。すなわち、乗用車販売が減少を続けているほか、家電販売も低調に推移している。また、百貨店売上高も、衣料品を中心に総じて低調であることから前年割れで推移している。この間、レジャー関連では、国内・海外旅行ともに低調に推移している。

設備投資を9月に実施した企業短期経済観測調査(神奈川県分)でみると、県内企業の98年度設備投資計画は、製造業、非製造業とも、前回(6月)調査に比べ下方修正されているなど、ここへきてさらに抑制的な計画となっている。

住宅投資は、持家、貸家、分譲とも引き続き減少傾向にある。公共投資を公共工事請負額でみると、上期前倒し発注の効果等から7〜9月期は約2年振りに前年を上回った。

輸出面では、半導体部品を中心とした電気機械や自動車部品等で引き続き減少したことから、横浜港通関輸出額は前年割れが続いている。輸入についても、非鉄金属、原油等の素材商品の減少から、前年を大きく下回る状況が続いている。

県内企業の生産動向をみると、大方の業種で大幅な減産が続いている。すなわち、乗用車および自動車部品では、国内販売の落ち込みに加え、輸出の減少もあって、在庫調整のための減産が続いている。また、汎用電子部品についても、家電販売の低迷を受け減産しているほか、半導体関連も生産水準を引き下げている。また、鉄鋼、化学といった素材業種でも、加工業種からの需要減少等に伴い減産を強化しているほか、工作機械についても、国内向け受注の減少を主因に生産水準を低下させている。

雇用面をみると、製造業、非製造業ともに雇用の過剰感は根強く、県内常用雇用者数は前年割れを続けるなど、労働需給は引き続き緩和した状態にある。この間、名目賃金についても、前年割れが続いている。

金融面をみると、現下の景気情勢の下で企業の資金需要が低迷を続けていることに加え、個人ローンも減少傾向にあることから、全体の貸出は低調に推移している。預金面では、法人預金が引き続き低調に推移していることに加え、個人預金が伸び悩んでいることから、預金全体の伸び率は鈍化傾向にある。

以上

東海地区金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、岐阜、三重、静岡)の最近の経済動向をみると、個人消費および住宅投資については、低迷が続く中で、一段と弱い動きとなっているほか、設備投資も、弱含みとなってきている。この間、公共投資は下げ止まっている。また、輸出については、欧米向けが堅調を持続していることに加え、アジア向けの減少が一服しており、増加している。

こうした需要動向の下で、生産は、振れを伴いながらも基調としては減少している。また、雇用面では、労働需給は引き続き緩和しており、常用雇用者数も減少している。こうした中、主要商品市況は、軟調に推移している。以上のように、東海地区の景気は、国内民間需要の弱まり等から、全般に悪化してきている。

個人消費は、低迷が続く中で、一段と弱い動きとなっている。すなわち、家電量販店の売上高は前年を上回っているものの、自動車販売については、軽自動車の新規格車投入効果は窺えるが、全体としてみればこのところ受注がさらに弱まっている。また、衣料品販売も、総じて低迷している。さらに、サービス支出面では、旅行取扱高の前年比マイナス幅が拡大しているほか、外食売上げも減少している。

設備投資は、弱含みとなってきている。すなわち、製造業では、自動車関連を中心とする大企業の新製品開発投資が引き続き高水準で推移しているが、中堅・中小企業は、収益の悪化や先行きの需要に対する不透明感の高まり等から投資抑制姿勢を強めている。また、非製造業では、大型商業施設建設の動きは底固いものの、電力は抑制的な投資スタンスにある。

住宅投資は、低迷の度を強めている。すなわち、新規住宅着工については、分譲が高水準の在庫等を眺めたデベロッパーの着工スタンスの慎重化等から減少傾向を強めているほか、貸家も低調に推移しており、持家も低水準横這いとなっている。こうした中で、工事量も減少している。

公共投資についてみると、政府の総合経済対策による前倒し発注の効果等から、公共工事請負額はこのところ前年を大幅に上回っており、建設業者の官庁関連の工事量も下げ止まっている。

輸出は、欧米向けが、資本財等を中心に堅調を持続していることに加え、アジア向けの減少が一服しており、全体として増加している。

こうした需要動向の下で、生産は、振れを伴いながらも基調としては減少している。すなわち、自動車を中心とする耐久消費財では、国内販売の低迷を主因に操業度を引き下げているほか、鉄鋼等の素材業種でも、最終需要が減少を続ける中、在庫の過大感もあって、全体として減産姿勢をやや強めている。この間、工作機械、情報通信機器・同部品では、欧米における需要堅調等を反映して、高操業を継続している。

雇用面では、労働需給は、鉱工業生産の減少等を背景に、引き続き緩和している。すなわち、所定外労働時間が前年水準を下回っているほか、新規求人数も減少を続けている。この間、企業倒産が増加していること等もあって求職者数が強含んでいることから、有効求人倍率も低迷している。こうした中で、常用雇用者数も減少している。

物価面では、主要商品市況は、最終需要が低迷する中で、軟調に推移している。この間、消費者物価は、横這い圏内の動きとなっている。

金融面では、企業の資金需要が低迷していることに加え、金融機関が信用リスクや取引採算に留意した貸出姿勢を採っていることもあり、貸出はこのところ伸びを低めている。この間、日本銀行による一段の金融緩和措置の実施(9月 9日)を受けて、短期プライムレートを引き下げる先がみられたほか、住宅ローンや市場金利連動型貸出を中心に、貸出金利を引き下げる動きが出てきている。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行京都支店

最近の管内景気をみると、依然として悪化を続けており、企業の業況感も一段と後退している。すなわち、公共投資が下げ止まりつつあるものの、輸出がアジア向けの不振から頭打ちとなっている。また、個人消費、住宅投資の低迷が続いているほか、設備投資も中小企業を中心に減少傾向を強めている。このような最終需要の動向を背景に、在庫がなお高水準にあり、企業では大幅な生産調整を続けている。そうした下で、企業収益が中小企業を中心に一段と悪化しているほか、雇用・所得環境も厳しさを増している。

最終需要の動きをやや詳しくみると、公共投資は、受注ベース(公共工事請負金額)でみると、予算の前倒し発注の進捗等から、このところ下げ止まってきている。

一方、輸出については、欧米向けは、一部に減速の動きがみられるが、パソコン・移動体通信機器用の電子部品や計測機器等を中心に引続き堅調に推移している一方、アジア向けが低迷を続けているため、全体としては頭打ち傾向にある。

また、個人消費については、自動車販売が引続き低迷しているほか、家電販売も一部の商品(パソコン関連)に売上増加の動きがみられるものの、全般的には販売不振が続いている。また、百貨店・スーパーの売上げも依然として低迷を余儀なくされている。この間、京都観光についても入り込み客の減少から低調に推移している。さらに、住宅投資も、新設住宅着工戸数をみると、大幅な前年割れを続けている。

この間、設備投資については、製造業大企業では、ハイテク関連企業では引続き前向きな投資姿勢を示しているものの、一部では業況 悪化から投資を抑制する動きがみられ始めている。また、非製造業、製造業中小企業では、収益の大幅な悪化や資金調達面の制約等から抑制的な動きが一段と強まっている(10/9月当店短観の10年度設備投資計画<前年度比、全産業ベース>:- 7.7%)。

生産面をみると、電子部品は欧米向け輸出の堅調持続から高操業を継続しているものの、輸送用機械、繊維機械等の一般機械がアジア向け輸出の低迷から減産を続けているほか、半導体製造装置も内外需の不振から生産が大幅に落ち込んでいる。また、地場産業の和装関連でも需要不振から大幅な減産継続を余儀なくされているなど、全体としてかなり大幅な生産調整を続けている。

企業収益をみると、最終需要の低迷に伴う売上げの減少や大幅な減産実施等から、中小企業を中心に悪化傾向を強めており、このところ本格的なリストラに踏み切る先が次第に増えている。

こうした状況の下で、雇用・所得面をみると、有効求人倍率が引続き低水準で推移しているほか、所定外労働時間も減少傾向にある。また、雇用調整助成金の申請件数も増加を続けるなど、雇用情勢は一段と厳しさを増している。また、企業倒産も、繊維、建設等の中小・零細企業を中心に引続き高水準に推移している。

金融面をみると、貸出については、住宅関連需資が既往住宅金融公庫貸出からのシフト等からなお比較的底固く推移しているものの、一般企業需資が不振の度合いを強めていることから、総じて低迷を続けている。

また、預金については、個人預金は流動性預金を中心に高目の伸びを維持している一方、法人預金は、企業の業況低迷に加え、金融機関サイドによる市場性大口定期預金の取入れ抑制もあって、引続き低調に推移している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行大阪支店

管内の経済情勢は、依然として悪化を続けている。最終需要面では、輸出が緩やかながら増加に転じ、公共投資も下げ止まっている。その一方で、設備投資、住宅投資は一段と減少しており、個人消費も低迷基調が強まっている。こうした最終需要動向を背景に、生産の減少傾向が続いているほか、企業収益が悪化しており、その下で雇用・所得環境も悪化を続けている。

最終需要面の動きをみると、輸出は、AV機器、工作機械等を中心に欧米向けが増加を続けており、東南アジア向けが横這い圏内にあることから、全体では緩やかながら増加に転じている。

設備投資は、製造業については、中小企業に加え、大企業についても、収益環境の悪化を受けて投資案件を先送りする先がみられるなど、投資姿勢が一段と消極化している。

個人消費については、パソコンの販売は盛り上がりをみせているものの、自動車販売が弱含んでいるほか、ブランド衣料等の高額品販売が引き続き落ち込んでおり、全体としては低迷基調が強まっている。

住宅投資は、一段と落ち込んでいる。

公共投資は、総合経済対策の効果から下げ止まっている。

生産面をみると、パソコン、エアコンが増加しているが、薄板、ガラス、塩ビ樹脂、伸銅品等、設備投資・住宅投資関連の多くの品目で、需要の不振に在庫調整の動きも加わって減少しており、全体として減産傾向が続いている。

雇用・所得面をみると、有効求人倍率が依然既往ボトムの水準にあるほか、所定外労働時間の減少が続くなど、引き続き悪化している。

物価面は、軟調に推移している。

企業倒産は、中小、零細企業を中心に引き続き増加している。

金融面をみると、貸出については、景気悪化に伴う企業需資の落ち込みや住宅ローンの増勢鈍化に加え、金融機関の貸出姿勢も企業業績の悪化等から慎重化しており、低調な地合が続いている。

預金については、個人預金が増加基調を続けているほか、法人預金も横這い圏内にあり、総じて安定的に推移している。

以上

兵庫県内金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行神戸支店

県内景気をみると、公共投資が経済対策の効果から増加に転じてきているものの、住宅投資が引続き低迷しているほか、個人消費も家電の一部新製品を除き総じて低調に推移している。こうした下で、企業の売上・収益は大幅に下振れしており、設備投資の抑制や一時帰休等の動きが拡がりをみせるなど、景気は一段と悪化の度合を強めている。
個人消費は、家電販売がパソコン等の新製品を中心に引続き堅調に推移しているものの、乗用車販売は夏場以降再び前年割れを続けている。また、百貨店やスーパーの売上も雇用・所得環境の悪化に天候不順が加わる形で、依然として伸び悩んでいる。

住宅投資は、震災関連需要が出尽くすなかで、先行きの雇用・所得に対する不安感の強まりから買い手の購入姿勢が慎重化し、大幅前年割れを続けている。一方、公共投資は、土木を中心に上期前倒し発注の効果が顕現化してきており、請負金額は前年比増加に転じている。

この間、設備投資は、企業収益の下振れや稼働率の低下を背景に、製造業を中心に抑制・先送り傾向が強まってきている。

こうした状況下、管内企業の生産は、大手造船、水晶振動子等の一部業種を除いて引続き低迷している。すなわち、鉄鋼が内需不振や米国のアンチダンピング提訴の動きから今後も大幅減産を続ける見通しにあるほか、自動車部品、電子部品(コンデンサー)も、セットメーカーの売上不振を受け低水準の操業を余儀なくされている。また、射出成形機、建設機械も、設備投資の落ち込みや東アジア向け輸出の停滞が続くなかで、生産調整が長期化している。これまで高目の生産を維持してきた物流機械(コンベア)、環境装置でも、受注残が目減りするにつれ生産水準が弱含んできている。

雇用面でも、企業の人員余剰感が強まるなかで、一時帰休等の動きが急速に拡がってきており、有効求人倍率も既往最低圏内で推移している。

金融面をみると、貸出は景気悪化を反映して、企業の前向きな資金需要が乏しく、金融機関の貸出姿勢も一段と慎重化していることが影響し、伸び悩んでいる。一方、預金をみると、法人預金は預貸相殺等が続いているものの、個人預金については慎重な消費姿勢を映じて、前年水準を引続き上回っている。

この間、企業倒産は、建設業を中心に件数、負債額とも高水準の状態が続いている。

以上

中国地区金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行広島支店

中国地区の景気をみると、公共投資が増加に転じ、輸出も下げ止まりつつあるものの、個人消費、住宅投資、設備投資の低迷が続いている。こうした最終需要の下で、生産は減少傾向にあり、雇用環境も厳しい状況が続いている。また、企業マインドはさらに悪化しており、景気は後退を続けている。
最終需要の動向をみると、個人消費は、雇用・所得環境の悪化を背景に、低調に推移している。家電販売は、天候要因や新製品投入効果等から比較的底固い動きとなっているものの、百貨店、スーパー売上高および自動車販売は、前年割れが続いている。

設備投資を中国地区企業短期経済観測調査結果(10年9月)からみると、10年度計画は、製造業、非製造業とも前年を下回っており、全産業では前年比−13.0%となっている。また、前回調査(6月)比でも減額修正となっており、企業の投資スタンスは慎重さを増している。

住宅投資をみると、新設住宅着工戸数は、前年比マイナス幅が縮小しているものの、低調であった前年をさらに下回って推移しており、低迷を続けている。

公共投資について公共工事請負額をみると、国や地方自治体における前倒し発注の進捗により、増加に転じている。

輸出については、アジア向けは低迷を続けているものの、欧米向けは堅調に推移しており、全体では下げ止まりつつある。
こうした最終需要のもと、生産は減少傾向にある。主要企業の生産動向をみると、造船、電子部品(半導体等)、弱電部品(液晶表示装置等)、情報家電(MD、FAX)では高水準の生産を続けており、自動車もこのところ前年水準を上回っている。もっとも、産業機械、石油化学、金属製品等の多くの業種では、内需減少やアジア向け輸出の低迷を背景に低調に推移しており、鉄鋼、パルプ・紙などではさらに生産水準を引き下げる動きもみられている。また、縫製、木材・木製品では生産調整を続けている。

雇用面をみると、常用雇用者数が前年を下回っているほか、有効求人倍率も低下が続いており、雇用環境は全体として悪化が続いている。
この間、企業収益を中国地区企業短期経済観測調査結果(10年9月)からみると、10年度計画は、前回調査(6月)に比べると下方修正されており、前回調査では増益見通しであったのに対して今回調査では前年比−1.8%の減益見通しに転じた。

企業マインドについては、製造業、非製造業ともほとんどの業種で業況感がさらに悪化している。また、先行きについても厳しい見方を崩していない。
金融面をみると、貸出については、企業の資金需要が引き続き低調なことから、低迷基調にある。

また、預金については、法人預金が資金繰りの窮屈化に伴う手元流動性の取崩しなどから低調に推移しており、前年比伸び率は低下傾向にある。

以上

四国地区金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区の景気は、厳しい状況が続いている。すなわち、政府の総合経済対策実施を受けて公共投資が増加しているほか、明石海峡大橋の開通により観光面でも明るさがみられているものの、個人消費や住宅投資の低迷が長引き設備投資も前年を下回るなど、最終需要は全体として停滞しており、企業の生産活動も弱含んでいる。こうしたなか、企業マインドは冷え込んでおり、雇用環境も厳しさを増している。

需要動向

最終需要の動向をみると、個人消費は、観光面で、明石海峡大橋の開通等に伴い観光施設や宿泊施設の一部で利用客の増加が続いているほか、家電販売でも、パソコン、AV等の一部に明るい動きがみられている。もっとも、乗用車販売は、月々の振れを伴いつつも引き続き低調な地合いにあり、また、百貨店売り上げも、依然前年割れの状況にあるなど、消費者マインドは総じて慎重な状態が続いている。

公共投資は、本四架橋(今治〜尾道ルート)、高速道路網の整備や電源開発関連工事等の大型継続案件の進捗に加え、総合経済対策の前倒し発注による効果がみられていることもあって、高水準となっている。しかし、住宅投資については、先行きの所得環境に対する不安感等から、依然大幅な前年割れの状況にある。

設備投資は、一部に合理化、省力化投資がみられるものの、製造業、非製造業ともに大型投資が一巡していることに加え、業績面の不振や景気の先行き不透明感等から、設備更新や能力増強投資を先送りするなど引き続き慎重な対応がみられており、全体としても前年を下回る動きとなっている。

生産

企業の生産活動をみると、電気機械(映像機器、表示装置等)、造船(外航船)が引き続き高目の操業を維持している一方、繊維(タオル、縫製品)は、ギフト需要や秋・冬物衣料の受注不振から低操業を余儀なくされているほか、紙・パ(印刷用紙、新聞用紙、家庭紙)では、在庫圧縮や販売価格の復元を企図した生産調整を継続している。また、一般機械(建機、金属・木工用プレス、農機具等)や鉄鋼(鉄骨加工、ネジ・ナット等)、建設用資材(木材・木製品等)でも、全国的な設備投資の減少に加え、住宅、自動車関連材の荷動き低迷や東南アジア向け輸出の不振等から、生産調整を継続する、あるいは操業度を引き下げる先がみられるなど、多くの業種で生産活動が低下している。

雇用

雇用情勢をみると、生産の弱含み等を背景とする人員過剰感の強まりから、新規求人を手控える動きが拡がっているほか、このところ企業の業績悪化や企業倒産の増加等を映じて、新規求職者が増加している。

金融

金融面をみると、預金は法人預金が低調に推移しているものの、個人預金は流動性預金を中心に堅調な伸びを持続している。一方、貸出は個人向け住宅ローンが増勢鈍化傾向にあるほか、企業向けも設備・運転資金ともに引き続き低調なことから、全体として伸び率が低下している。

以上

九州地区金融経済概況

1998年10月26日
日本銀行福岡支店

九州経済をみると、最終需要の弱さを背景に全般に悪化した状態が続いており、企業の景況感も厳しいものとなっている。

最終需要の動向をみると、公共投資は、10年度予算の前倒し発注などの総合経済対策を受けて、徐々に持ち直し始めている。

個人消費は、雇用・所得環境が悪化するなか、低調に推移している。また、住宅投資は、依然として落ち込んだ状態が続いている。

企業の設備投資は、企業業績の悪化を背景に大幅に減少している。

輸出は、欧米向けが概ね堅調な伸びを示すなかで、アジア向けも減少幅が縮小しており、全体では横這い圏内の動きとなっている。一方、輸入については、内需の低迷を主因に減少傾向を辿っている。

企業の生産動向をみると、内外需要の減少を背景に、鉄鋼、化学、情報関連機器が低操業を継続しているほか、IC、一般機械も一段と生産水準を引き下げており、全体の生産は減少傾向を辿っている。

企業業績をみると、最終需要の低迷長期化等を映じて、製造業、非製造業とも悪化傾向にある。

企業倒産は高水準で推移しており、雇用面では、完全失業率、有効求人倍率などの各指標が大幅な悪化をみている。

金融面の動きをみると、銀行預金は、個人預金が比較的高い伸びを続けている一方、法人預金が前年割れとなっているため、全体ではやや低調に推移している。また、銀行貸出は、資金需要の減少や金融機関の慎重な融資姿勢等を背景に増勢が一段と鈍化している。

以上