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資金決済システムの運営等についての国際基準に関する日本銀行の適合状況

2003年 7月23日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、冒頭部分(はじめに)を掲載しています。(全文 [PDF 111KB] )。

 国際決済銀行(BIS)は、2001年1月、「システミックな影響が大きい資金決済システムに関するコア・プリンシプル」(以下「資金コア・プリンシプル」という)を公表した1。資金コア・プリンシプルは、重要な資金決済システムに関する国際基準を記述した報告書である2。そこには、システミックな影響の大きい資金決済システム3がその設計や運営に関して満たすべき10の基本原則と、民間主体や中央銀行が運営する資金決済システムにこれら基本原則を適用していくうえで中央銀行が果たすべき4つの責務が示されている(別紙参照)4

 本稿は、その「基本原則」や「中央銀行の責務」に照らし、日本銀行自身の資金決済システムの設計と運営、およびわが国の資金決済システムに基本原則を適用していくうえで日本銀行が果たしている役割について、それが国際基準に適合するものであることを確認することを目的としたものである。

 決済システムの安全性と効率性の確保は、金融システムの安定性を維持し向上させるうえで不可欠の要件である。とくにシステミックな影響の大きい資金決済システムは、金融システムの機能を支える重要な仕組みであるとともに、そのシステムの一角における混乱が、そのシステムの他の参加者さらには金融システム全体に連鎖的な混乱を引き起こす可能性を有している。資金コア・プリンシプルの掲げる「基本原則」は、そのような決済システムの設計と運営が、より安全で効率的なものとなることを促すために策定されたものである。また、「中央銀行の責務」には、中央銀行が個々の決済システムの安全性と効率性を向上させ、とくにシステミック・リスクを削減するために働きかけを行うこと(「オーバーサイト」)が含まれている。

 日本銀行は現在、資金コア・プリンシプルの掲げる「基本原則」と「中央銀行の責務」を具体的な基準とし、それに則って、自ら決済システム5を運営するとともに、民間主体が運営する決済システムに対するオーバーサイト6を行うなど、わが国の決済全体の安全性と効率性の確保に向けた努力を続けている。こうした努力の一環として、日本銀行は、2002年9月、「決済の分野における日本銀行の役割」を公表し7、日本銀行が決済の分野において果たしている具体的な役割について、その基本的な考え方や活動状況を説明している。

 日本銀行の運営する資金決済システムでは、短期金融取引の決済、国債等の証券取引に伴う資金決済、民間決済システムの最終的な決済等金融機関間の主要な決済が行われており、その規模をみても、2002年中、1営業日当り金額ベースで約73兆円、件数ベースで約19千件の決済を処理していることから、システミックな影響の大きい資金決済システムに該当すると判断される。このようなシステムは、そのシステムにショックが生じた場合に、その影響が内部に留まらず、他の決済システムへと波及し、ひいては金融システム全体の安定を脅かす惧れがある。このため、そうした決済システムについては、運営主体自らが「基本原則」への充足を継続的に評価し、その結果や、(改善すべき点がある場合には)対応方針を公表することが適当と考えられる8。また、日本銀行は、オーバーサイトを始めとする、基本原則の適用に向けた中央銀行としての取組みについても、その役割や政策に対する透明性を高める観点から、「中央銀行の責務」に照らした自己評価を行いその結果を公表することとした。9

  1. 国際決済銀行(BIS)のG10総裁会議の下に設けられている支払・決済システム委員会(CPSS)が策定。
  2. 資金コア・プリンシプルの原文は、国際決済銀行(BIS)のホームページに掲載(外部サイトへのリンク)。日本銀行仮訳については、本ホームページを参照。
  3. 「システミックな影響の大きい資金決済システム」とは、金融システムの機能を支える重要な決済システムのことをいい、ある決済システムがこれにあたるかどうかは当該決済システムが処理する個々の支払の規模や性質、取扱総額等を踏まえて判断される。
  4. 資金コア・プリンシプルの策定経緯等については、別添1を参照。
  5. 日銀当預決済システム。日本銀行が提供する当座預金(「日銀当預」)の振替や入金・引落しによって資金の決済を行う仕組みをいう。当該決済システムの概要については、別添2を参照。なお、日本銀行はこれとは別に、日本国債の受払を行う証券決済システムを運営している。
  6. 日本銀行のオーバーサイトとは、わが国の決済全体の安定性と効率性を確保することを目的として、民間主体が運営する決済システムについて、その安全性と効率性に注意を払い、必要があればその改善に向けた働きかけを行うことである。そのオーバーサイトの概要については、別添3を参照。
  7. 本ホームページを参照。
  8. 全国銀行協会では、2001年12月、内国為替制度、外国為替円決済制度、東京手形交換所の資金コア・プリンシプルの適合状況について、「国内の主要決済システムの『決済システムに関するコア・プリンシプル(基本原則)』(BIS策定)への適合状況に関する自己評価」として公表している。
  9. 以下では、個々の「基本原則」(I〜X)、「中央銀行の責務」(A〜D)毎に適合状況を説明している。そこでは、各「基本原則」と各「中央銀行の責務」を黒線の囲みで囲んでいるほか、それらを充足するにあたりとくに留意すべき事項について、資金コア・プリンシプルの記述に基づきつつ「評価の視点」として整理している(イタリックで記述)。