このページの本文へ移動

日銀ネット国債系システムにおけるRTGS化対応の具体的内容および日銀ネット国債系システムの運行について

1999年 2月
日本銀行

1.はじめに

 日本銀行は、一昨年4月以降、当座預金決済および国債決済のRTGS化を西暦2000年末までに実現するためのシステム開発作業を鋭意進めてきております。

 この間、国債決済のRTGS化対応については、一昨年10月に「『RTGS化』に関する日本銀行の検討状況について」を、昨年9月に「国債決済の『RTGS化』の枠組みについて」を、それぞれ公表1し、関係者の方々がRTGS化に対応していく上で必要となる各種決済慣行の見直しやシステム対応等の参考に供したところです。

 この度、日銀ネット国債系システム利用先(以下「利用先」といいます。)宛に日銀ネット国債系システムにおけるRTGS化対応の概要ならびに日銀ネットの国債系システム2を中心とした運行イメージ等の詳細要件を記述した通知を送付しました。本稿ではその通知の概要を説明します3

  1. 両資料は、日本銀行ホームページ、日本銀行月報(1997年10月号)および日本銀行調査月報(1998年9月号)に掲載しております。
  2. 本稿における国債系システムとは、登録システム、振決システム、発行・払込システム、短期国債売買システムおよび国債DVPシステム(含む国債DVP同時担保受払システム)のことをいいます。
  3. ただし、本稿で記載した内容は日銀ネット国債系システムにおける今後のシステム開発の前提となる要件を取りまとめたものであり、制度変更(租税特別措置法における国債利子課税の取扱の変更等)やシステム上の制約等により開発作業の過程でその内容が一部変更になる可能性があります。

2.RTGS化後の日銀ネット国債系シ

(1)日銀ネット国債系システムの運行イメージ

 既に公表した内容と重複する点を含め、日銀ネットの国債系システムを中心とした運行イメージを整理すると、以下のとおりです(次の図1を参照)。

(図1)RTGS化後の日銀ネットの運行イメージ

  • 図1

イ.市中金融機関等の間での国債の受渡

RTGS化後は、市中金融機関等の間での登録国債の移転登録請求および振決国債の口座振替指図(DVPによる場合を含む)については、オンライン、書面いずれによる場合でも4、優先処理(請求の受付後、遅滞なく処理する方式)のみとします。

ロ.市中金融機関等と日本銀行との間の国債の受渡

  1. (a)日本銀行が外国中央銀行等から保護預りしている国債の受渡
    上記国債の受渡5は、RTGS化後も現行同様に一般処理(登録日・受払日の一時点(午後3時頃)に複数の請求を一括して処理する方式)で行い、その資金決済も3時同時処理で行います。
  2. (b)FB・TBオペ
    FB・TBオペ(政府短期証券の買戻条件付売却および割引短期国債の売戻条件付買入をいいます。以下同じ。)については、日本銀行の買入および売却の両ケースとも、市中金融機関等と日本銀行との間の国債の受渡は優先処理で、その資金決済は即時処理で行います。
  3. (c)長国オペ等
    長国オペ(国債買切オペ、国債レポオペおよび国債現先オペをいいます。以下同じ。)および資金運用部・国債整理基金対市中国債売買(以下「長国オペ等」といいます。)については、日本銀行、資金運用部および国債整理基金(以下「日本銀行等」といいます。)が国債を譲渡す場合には、市中金融機関等と日本銀行等との間の国債の受渡を優先処理で、その資金決済を即時処理で同時に行います。一方、日本銀行等が国債を譲受ける場合には、市中金融機関等と日本銀行等との間の国債の受渡を一般処理で、その資金決済を3時同時処理で行います。

ハ.国債発行・払込

国債発行・払込について、引受・応募代金の払込は3時同時処理で、国債の当初登録および当初寄託は一般処理で行います。但し、日本銀行小切手により引受・応募代金の払込が行われる場合には、これを即時処理で行うとともに、国債の当初登録および当初寄託を優先処理で行うことが可能です。

ロ.(a)および(c)ならびにハ.のうち、RTGS化後も一般処理で行われる国債の受渡およびその資金決済については、2000年末以降早期のRTGS化の実現を目指す方針です。

ニ.その他

  1. (a)付記登録
    登録国債につき質権設定もしくは担保権設定等の付記登録または同抹消の請求を行う場合には、日本銀行が請求の一方当事者となるときを除き、優先処理のみとします(オンラインによるか書面によるかを問いません)。
    日本銀行を請求の一方当事者とする付記登録(日本銀行を質権者とする質権設定の登録等)を請求する場合、または振決国債を日本銀行に担保として差入れるためもしくは日本銀行に差入れた担保を受戻すために口座振替指図を行う場合には、優先処理または一般処理のいずれをも選択できます6。なお、現在は、この付記登録の請求または口座振替指図は書面により行われていますが、RTGS化後は、現在開発中の与信・担保システム7を利用してオンラインにより行い得る扱いとなります8
  2. (b)登録国債と振決国債との間の相互の変換
    RTGS化後は、登録国債と振決国債との間の相互の変換、即ち「登録国債による寄託」および「登録国債による返還」については、優先処理のみとします(請求がオンラインによるか書面によるかを問いません)。
    なお、利付国債を振決制度における非課税口9に寄託する場合において、寄託日がその国債の利子計算期間の初日10以外のときは、現行同様、日本銀行において非課税要件を確認した後に、その処理を行います。

(2)国債入力締切時刻の延長

 RTGS化後は、利用先は、日銀ネット国債系システムにおいて、先日付入力(入力日の翌日以降の営業日を決済日として指定した入力)は行えないこととなるため、決済日当日に全ての入力を行う必要があります。また、RTGS化後は、利用先において、一般処理終了後、発行・払込において当初登録または当初寄託された国債や外国中央銀行等から譲受けた国債を他の市中金融機関等に譲渡するニーズがあると考えられます(2.(1)ロ.およびハ.を参照)。こうした点を踏まえて、日本銀行では、日銀ネット国債系システムにおける利用先のオンライン入力締切時刻(以下「最終国債入力締切時刻」といいます。)を現行の15時から16時に1時間繰下げることとします。また、日本銀行本店における書面の受付締切時刻についても16時とします11

なお、FB・TBオペおよび長国オペ等にかかる利用先の入力締切時刻は後述3.(1)、(2)を参照してください。

  1. 4国債DVPは、オンラインによってのみ行えます。
  2. 5厳密に言えば、登録国債については、市中金融機関等の登録記名と日本銀行が外国中央銀行等の常任代理人となっている記名との間の移転登録。振決国債については、市中金融機関等の参加者口座と日本銀行の参加者口座(預り口)との間の口座振替。
  3. 6ただし、国債DVP同時担保受払システムを利用して、日本銀行に振決国債を担保として差入れるために口座振替指図を行う場合には、優先処理のみとなります(国債DVP同時担保受払については後述3.(3)を参照)。
  4. 7日本銀行では、(a)与信および担保受払事務を合理化し、(b)取引先の担保利用の効率化を図るとともに、(c)RTGS化への対応をシステム面からサポートすることが必要と判断し、与信および担保受払関係事務を日銀ネットにより処理する与信・担保システムの開発を進めています。
  5. 8ただし、手形貸付の担保として登録国債を日本銀行に差入れまたは日本銀行に差入れた担保を受戻す場合には、現行と同様、日本銀行を質権者とする質権設定・抹消等の付記登録の請求を書面により行う必要があります(与信・担保システムを利用してオンラインにより請求することはできません)。また、手形貸付担保として振決国債を日本銀行に差入れまたは日本銀行に差入れた担保を受戻す場合にも、口座振替指図を書面により行う必要があります。
  6. 9預り口IIに寄託する場合は除きます。
  7. 10寄託を行う利付国債の「発行日」または「利子支払期日およびその翌日(両日が休日の場合はその翌営業日)」のこと。
  8. 11ただし、「証券登録」、「登録除却」、「証券寄託」、「証券返還」、「券面種類交換」および「汚損き損証券引換」等にかかる書面の受付締切時刻は現行同様15時となります。

3.RTGS化に伴う日銀ネット国債系システムの機能

(1)FB・TBオペの決済方法の変更

 RTGS化後は、FB・TBオペについては、すべて、優先処理により国債の受渡を行います。具体的には、短期国債売買システムに「短期国債売買OKサイン」の入力画面を新たに設け、利用先が同入力を行ったときに(利用先起動により)、国債の受渡を優先処理で、資金決済を即時処理で同時に行います。

利用先における「短期国債売買OKサイン」の入力締切時刻は原則として15時とします(但し、新規発行銘柄を発行日にオペの対象とする場合には、「短期国債売買OKサイン」の入力を15時以降も可能とする方針です)。

(2)長国オペ等のDVP化

 RTGS化後は、長国オペ等について、日本銀行等が国債を譲渡する場合は、国債DVPシステム12を利用し、優先処理で国債の受渡を行います。具体的には、利用先が「資金受渡依頼」を入力したときに(利用先起動により)、国債の受渡を優先処理で、資金決済を即時処理で同時に行います。

利用先の「資金受渡依頼」の入力画面は、長国オペ等の場合とそれ以外(利用先間のDVPによる国債受渡)の場合とで共通となります。  ただし、利用先における「資金受渡依頼」の入力締切時刻は、長国オペ等の場合は15時、それ以外の場合は16時です。

(3)国債DVP同時担保受払機能

イ.概要

RTGS化後において、DVPによる国債の受渡の円滑化を図るため、国債DVPシステムとは別に、次の点を骨子とする国債DVP同時担保受払機能(次の図2を参照)を付したシステムを新設します(以下「国債DVP同時担保受払システム」といいます)。

  1. (a)利用先がDVPにより国債を譲渡する場合には、日本銀行に担保として差入れている国債を受戻してその国債を譲渡すると同時に、当座勘定への入金(国債の譲受人からの資金払込)が行われます。その際、日本銀行から当座貸越を供与されている場合には、当座貸越が回収されます。
  2. (b)利用先がDVPにより国債を譲受ける場合には、その譲受ける国債を日本銀行に担保として差入れると同時に、資金受渡金額が当座勘定から引落されます。その際、当座預金残高が不足する場合には、当該譲受国債を含む差入済み担保国債の担保価額の範囲内で日本銀行から当座貸越が供与されます。
  3. (c)(a)にかかる入力(「国債受渡(資金同時受渡)・担保(同時受払)返戻依頼」の入力)は国債の譲渡人が、(b)にかかる入力(「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」の入力)は国債の譲受人がそれぞれ行いますが、国債の譲受人における(b)の入力が行われた段階で、(a)および(b)にかかる処理が同時に実行されます。

(図2)国債DVP同時担保受払機能

  • 図2

利用先はDVPによる国債の受渡を行うに当って、任意に国債DVPシステムまたは国債DVP同時担保受払システムのいずれかのシステムを利用することが可能となります。従って、RTGS化後は、DVPによる国債の受渡にかかる入力について次の4パターンが考えられます。

  1. (a)国債の譲渡人が「国債受渡(資金同時受渡)・担保(同時受払)返戻依頼」を、譲受人が「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」を入力するケース。
  2. (b)国債の譲渡人が「国債受渡(資金同時受渡)」を、譲受人が「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」を入力するケース。
  3. (c)国債の譲渡人が「国債受渡(資金同時受渡)・担保(同時受払)返戻依頼」を、譲受人が「資金受渡依頼」を入力するケース。
  4. (d)国債の譲渡人が「国債受渡(資金同時受渡)」を、譲受人が「資金受渡依頼」を入力するケース。

ロ.利用上の留意点

  1. (a)資金決済
    国債DVP同時担保受払システムを利用した場合の資金決済は、既存の当座勘定ではなく、専用の当座勘定(以下「当座勘定(同時担保受払時決済口)」といいます。)で行います13
    また、国債DVP同時担保受払システムを利用した場合の当座貸越の供与および回収も、当座勘定(同時担保受払時決済口)で行います。
  2. (b)担保
    国債DVP同時担保受払システムにおいて、日本銀行に差入れる担保(以下「担保(同時受払)」といいます。)は、当座勘定(同時担保受払時決済口)において当座貸越の供与を受けるために使用するものであり、その担保をもって既存の当座勘定において当座貸越の供与を受けることはできません14
    担保(同時受払)については、担保の店舗間振替15を行うことはできません。
  3. (c)最終国債入力締切時刻における取扱い
    利用先は、国債DVP同時担保受払システムの入力を、日銀ネット国債系システムの最終国債入力締切時刻である16時まで行うことができます。ただし、利用先は、当座勘定(同時担保受払時決済口)の残高および担保(同時受払)現在高を翌営業日に持ち越すことはできませんので、「担保(同時受払)返戻依頼」等の所定の入力を行うことにより、16時までに当座勘定(同時担保受払時決済口)の残高および担保(同時受払)現在高をともにゼロにしておく必要があります。
  4. (d)国債DVP同時担保受払システムの利用先となるための条件
    国債DVP同時担保受払システムの利用先となるためには、次の条件を全て満たす必要があります。
    1. a)国債DVPシステムおよび当預システムの利用先であること。
      「国債受渡(資金同時受渡)」(国債の譲渡人における入力)および「資金受渡依頼」(国債の譲受人における入力)の両方の入力を行える必要があります。
    2. b)当座貸越取引先であること。
      なお、担保(同時受払)の返戻依頼を行うことができるのはその担保の差入を行った店舗(以下「差入人」といいます。)のみですので、国債DVP同時担保受払システムを利用する場合には、同一店舗において「国債受渡(資金同時受渡)・担保(同時受払)返戻依頼」および「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」の両方の入力を行う必要があります。
      また、第三者による「担保(同時受払)差入」の入力は行えません。従って、国債DVP同時担保受払システムを利用する場合に、「国債受渡(資金同時受渡)・担保(同時受払)返戻依頼」の入力を国債の譲受人が行うことや、代行決済銀行を利用して資金決済を行うことはできません16
  5. (e)FB・TBオペ、長国オペ等
    国債DVP同時担保受払の機能については、利用先間の国債の受渡に加えて、利用先と日本銀行等との間において優先処理で次の国債の受渡を行う場合にも利用することが可能です。
    1. a)FB・TBオペにおいて、利用先が日本銀行から国債を譲受ける場合および日本銀行に国債を譲渡する場合。
      利用先が短期国債売買システムにおいて「短期国債売買OKサイン」を入力する際に、国債DVP同時担保受払機能の利用の有無を指定します。
    2. b)長国オペ等において、利用先が日本銀行等から国債を譲受ける場合。
      利用先が国債DVP同時担保受払機能を利用する場合には、国債DVP同時担保受払システムにおいて「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」を入力します。
      なお、一般処理で行われる利用先と日本銀行等との間の国債受渡17、および発行・払込における国債の当初登録または当初寄託については、国債DVP同時担保受払機能を利用することはできませんが、与信・担保システムにおいて3時同時処理を指定した「担保返戻依頼」または「担保差入」の予約入力を行うことにより18、国債DVP同時担保受払機能を利用したのと同等の効果を得ることが可能です。
      例えば、長国オペ等において日本銀行等に国債を譲渡する場合には、日本銀行に担保として差入れている国債について、与信・担保システムにおいて3時同時処理を指定した「担保返戻依頼」の予約入力を利用先が行うことにより、3時同時処理・一般処理において、担保国債の受戻、その国債の日本銀行等への譲渡および当座勘定への入金が同時に行われます。その際、日本銀行から当座貸越が供与されている場合には、当座貸越の回収も併せて行われます。
      また、国債の発行・払込において、一般処理で当初登録または当初寄託により取得することとなる国債について、与信・担保システムにおいて3時同時処理を指定した「担保差入」の予約入力を利用先が行うことにより、3時同時処理・一般処理において、国債の当初登録・当初寄託、その国債の日本銀行への担保差入、払込資金の当座勘定からの引落が同時に行われます。その際、当座預金残高が不足する場合には、日本銀行からの当座貸越の供与も併せて行われます。
  6. (f)対象国債
    国債DVP同時担保受払システムを利用して受渡すことができる国債は、登録国債および振決国債のうち、次に掲げる国債を除くものです。
    1. a)登録国債のうち登録記名が常任代理人記名または信託口記名であるもの。
    2. b)振決国債のうち種別が信託口であるもの。
    3. c)振決国債のうち参加者口座が自己口IIもしくはIVまたは預り口であるもの。

(4)国債DVPシステム等の新設機能

イ.市中

 国債DVPシステムおよび国債DVP同時担保受払システムにおいては、国債の譲渡人が「国債受渡(資金同時受渡)」または「国債受渡(資金同時受渡)・担保(同時受払)返戻依頼」を入力し、国債の譲受人がこれに対応する「資金受渡依頼」または「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」を入力した場合に、国債の受渡および資金決済が同時に行われます。

 RTGS化後においては、DVPによる利用先間の国債の受渡の事務量が増加すると予想されることもあり、国債の受渡が円滑に行われるためには、国債の譲渡人および譲受人が正確かつ迅速な入力を行うことが重要になると考えられます。そこで、日本銀行では、国債DVPシステムおよび国債DVP同時担保受払システムにおいてこれをサポートする次の機能を新たに設けます。

  1. (a)確認依頼事項通知
    国債DVPシステムに「国債受渡(資金同時受渡)確認依頼事項通知」の入力画面を新設し、国債の譲渡人の「国債受渡(資金同時受渡)」または「国債受渡(資金同時受渡)・担保(同時受払)返戻依頼」の入力内容に誤りがあった場合に、国債の譲受人が、同画面で入力を行うことにより、国債の譲渡人に対して入力内容の確認依頼を行うことができます(その場合には、国債の譲渡人に「国債受渡(資金同時受渡)確認依頼事項通知」が出力されます)。
  2. (b)残高不足通知等
    国債DVPシステムおよび国債DVP同時担保受払システムに「国債残高不足通知」および「国債資金同時受渡・担保(同時受払)受払不実行通知」の出力帳票を新たに設けます。
    国債の譲渡人の国債残高の不足または担保(同時受払)現在高の不足が原因で、国債の譲受人の「資金受渡依頼」または「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」の入力がエラーとなった場合には、国債の譲渡人に「国債残高不足通知」を送信します19。また、国債の譲渡人の当座勘定(同時担保受払時決済口)の引落資金の不足20が原因で、「資金受渡依頼」等の入力がエラーとなった場合には、国債の譲渡人に「国債資金同時受渡・担保(同時受払)受払不実行通知」を送信します21
  3. (c)資金受渡依頼入力所要時間の出力帳票への表示
    国債DVPシステムおよび国債DVP同時担保受払システムにおいて、国債の譲受人が「資金受渡依頼」または「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」を入力したときに譲渡人および譲受人へ出力される帳票に、「国債受渡(資金同時受渡)」または「国債受渡(資金同時受渡)・担保(同時受払)返戻依頼」が入力されてから「資金受渡依頼」または「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」が入力されるまでの所要時間を表示することとします。
    なお、最終国債入力締切時刻の16時までに、国債の譲受人は「資金受渡依頼」または「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」を入力する必要がありますが、同締切時刻において「資金受渡依頼」または「資金受渡依頼・担保(同時受払)差入」が入力されなかった「国債受渡(資金同時受渡)」または「国債受渡(資金同時受渡)・担保(同時受払)返戻依頼」は取消されます(翌営業日には持ち越されません)。

ロ.振決国債の預り口のDVP化対応

 現在、国債DVPシステムでは、預り口(国債振替決済制度における参加者が顧客から寄託を受けた国債を管理する口座)に寄託されている振決国債の受渡を行うことはできませんが、RTGS化の実現と同時にその受渡を可能とする対応を行う方向で検討しています。

(5)予定残高チェックの廃止

 現在、日銀ネット国債系システムでは、予定残高22(一般処理実行後の残高として見込まれる残高)の不足を新たに生じさせ、または不足額を拡大させるようなオンライン入力が当日に行われた場合には、その入力をエラーとしています。しかし、RTGS化後においてこの予定残高チェックを存続させた場合には、優先処理による入力が行われたときに、本残高は不足していないにも拘らず、予定残高が不足しているために、その入力がエラーとなり、市中金融機関等間の円滑な国債の受渡を阻害してしまう可能性が高いと考えられるため、RTGS化後は予定残高チェックを廃止することとします。

なお、現在、国債DVPシステムでは、優先処理を指定した「国債受渡(資金同時受渡)」が入力された場合には、国債の譲渡人にかかる国債残高チェックについて、「国債受渡(資金同時受渡)」が入力されたときに予定残高チェックを、「資金受渡依頼」が入力されたときに本残高チェックをそれぞれ行っていますが、RTGS化後は後者のみ行うこととなります。

  1. 12国債DVPシステムでは、国債の譲渡人は、「国債受渡(資金同時受渡)」を入力することにより、日本銀行に入金先を指定してその当座勘定への入金と同時に国債の受払を行うことを依頼します。一方、国債の譲受人は、「資金受渡依頼」を入力することにより、自己の当座勘定を引落とし、国債の受払にかかる資金を日本銀行に払込むことを依頼します。RTGS化後は、国債の譲受人が「資金受渡依頼」を入力したときに、国債の受渡を優先処理で、資金決済を即時処理で同時に行います。
  2. 13利用先は、当座勘定(同時担保受払時決済口)を日本銀行と当座勘定取引のある店舗毎に開設することが可能です。なお、開設に当っては、後述の3.(3)ロ .(d)の条件を満たす必要があります。
  3. 14既存の当座勘定における当座貸越については、与信・担保システムの稼働により、その担保を「買入手形担保および代理店保証品」としても共通に利用することが可能となります。
  4. 15与信・担保システムでは、利用先が担保差入を行うに当って当該担保を使用する日本銀行本支店(以下「取引店」といいます。)を指定する必要がありますが、利用先はオンライン入力により随時この取引店を変更することができます。
  5. 16国債DVPシステムでは、「国債受渡(資金同時受渡)」を国債の譲受人が入力することや、代行決済銀行を利用して資金決済を行うことが可能です。
  6. 17具体的には、長国オペ等において日本銀行等が国債を買入または借入れる場合の国債の受渡、日本銀行が外国中央銀行等の保護預りをしている国債の日本銀行と利用先との間の受渡があります。
  7. 18与信・担保システムにおいては、3時同時処理を指定した「担保返戻依頼」または「担保差入」の予約入力を行うことが可能です。
  8. 19国債の譲受人(入力元)にも「国債残高不足通知」を送信します。
  9. 20返戻を依頼した担保(同時受払)の価額に比べて当座勘定(同時担保受払時決済口)への入金額が少額であるために、当座勘定(同時担保受払時決済口)の引落資金が不足するケース。
  10. 21国債の譲受人(入力元)にも「国債資金同時受渡・担保(同時受払)受払不実行通知」または「国債資金同時受渡不実行通知」を送信します。
  11. 22登録国債の場合は予定残高(付記控除後)。

4.日銀ネット国債系システムの入力画面・出力帳票等の変更点23

(1)入力画面・出力帳票

 市中金融機関等の間での国債の受渡が当日優先処理のみとなることに伴い、「移転登録(譲渡人)」、「口座振替(払出先)」等の利用先の入力画面における入力項目から「処理区分」を削除するほか、各種取消画面(「登録取消」、「振決取消」および「付記登録取消」)および一般処理から優先処理への処理区分変更にかかる入力画面(「処理区分変更」24および「付記登録処理区分変更」)を廃止します。また、取消入力および処理区分変更にかかる出力帳票、および先日付入力分の明細を表示した「国債登録受払予告」、「国債振替決済受払予告」等の出力帳票も廃止します。

 一方、国債残高25の異動が生じた場合は、現在は利用先の出力帳票に異動後の国債残高を表示していませんが、RTGS化後は、利用先が容易に残高を管理できるよう、各種出力帳票に異動後の国債残高を表示するとともに、「登録国債処理番号」、「振決国債処理番号」(銘柄毎に残高異動の都度付番するもの26)も併せて表示します。

なお、書面に基づき日本銀行が優先処理を指定した入力を行った場合にも、利用先に対して異動後の国債残高を表示した「国債残高通知」等を送信します。

(2)照会機能

 現在、国債残高をリアルタイムで照会する場合には、1銘柄単位での照会のみ可能ですが、RTGS化後は、利用先における残高管理の利便性を勘案し、複数銘柄の国債残高を同時に照会できる「残高(複数銘柄指定)」の画面を新設します(1画面で10銘柄まで指定可能)。

「残高(複数銘柄指定)」の画面は、登録国債用と振決国債用とで別画面となります。

  1. 23FB・TBオペにおける短期国債売買システム、国債DVPシステムおよび国債DVP同時担保受払システムにおける入力画面・出力帳票等については除きます。
  2. 24登録システムおよび振決システムの両入力画面。
  3. 25登録国債の場合は、国債残高(付記控除後)。
  4. 26厳密にいえば、登録国債処理番号は、記名者、銘柄毎に付番されます(但し、初期利子支払期日未到来の利付国債については、記名者、銘柄、発行日毎に付番されます)。一方、振決国債処理番号は、振決参加者、参加者種別、口座区分、銘柄毎に付番されます(但し、初期利子支払期日未到来の利付国債については、振決参加者、参加者種別、口座区分、銘柄、発行日毎に付番されます)。

5.システム接続

 RTGSの下では、利用先において、事務合理化・効率化の観点から、自行(社)システムにおいて国債残高、電文の送受信状況等につき一元管理するために、日銀ネット国債系システムについて、CPU接続(利用先のコンピューターと日銀ネットとをシステム接続することによりデータの送受信を行うもの)を利用したいとのニーズがあると考えられます。そこで、日銀ネット国債系システムにおける各種電文の送信および受信につき、CPU接続(ファイル伝送方式)の利用を可能とします27。また、NTCファイル伝送およびFDデータ交換機能28を利用できる電文の対象を拡大します。

CPU接続の対象電文は、基本的には、利用先からの送信電文については国債残高および担保(同時受払)現在高の異動を伴うものであり、利用先の受信電文については国債残高および担保(同時受払)現在高を表示するものです。

  1. 27RTGS化後は、当預システムにおいても、電文の送信および受信につきCPU接続の利用を可能とします。
  2. 28NTCファイル伝送機能とは、日銀ネット端末と利用先コンピューターを回線接続することにより、データのファイル伝送を両者間で行うことをいいます。また、FDデータ交換機能とは、日銀ネット端末と利用先コンピューター間において、FD(フロッピーディスク)を媒介にしてデータの交換を行うことをいいます。

6.書面請求の扱い

 RTGS化後は、提出された書面に基づき日本銀行が各種入力を行った場合において、譲渡人の国債残高不足により入力がエラーとなったときには、現行同様に、その請求を却下する扱いとします(書面は提出者に返却します)。従って、書面を提出するに当っては、オンライン入力と同様、国債残高を厳格に管理することが必要となることに加え、日本銀行への書面提出のタイミングも重要となります。

日本銀行が書面請求を受付け、請求を処理した場合には、請求者に対して「国債登録簿登録済通知書」、「国債振替決済払出済通知書」、「国債振替決済受入済通知書」等を交付しますが、これらの通知書に異動後の国債残高を表示する場合においても、前述の4.(1)における「登録国債処理番号」または「振決国債処理番号」は表示されません。

7.おわりに

 日本銀行では、RTGS化後における利用先の円滑な国債の受渡をサポートするため、上述のとおり日銀ネットにおける各種機能の追加等の施策を講じていく予定です。

 また、利用先をはじめ関係者におかれましては、RTGS化にあわせて、日本銀行にオンライン請求または書面請求を行う際に残高不足とならないよう、国債残高管理を厳格化することや、決済のすくみを回避するための迅速な入力を行うための、事務処理体制構築やシステム対応に加え、各種決済慣行の整備に向け、検討を進めて頂く必要があるものと考えております。

 なお、本稿でお示ししたRTGS化に関する内容につきまして、ご質問等がおありの場合には、下記までお寄せ頂ければ幸甚です。

本稿に対する照会先

日本銀行業務局総務課

電話:03−3279−1111 内線6082