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日本銀行当座預金決済の「RTGS化」について

はじめに

1.決済システムのリスク対策を強化する必要性が高まっている。その主たる背景は、近年における金融取引量の増加が決済ボリュームを——従って決済リスクを —— 著しく増大させているほか、国内金融機関の破綻事例がみられ始めていることである。加えて、各国金融機関が互いに国境を越えて活発に活動している結果、海外で発生した経営破綻や決済システム関係の事故が直ちに国内決済システムの動揺に結びつくようになったことも、従来より厳しい決済リスク対策の必要性を高めている。

2.中央銀行における金融機関の当座預金は、その国の通貨の様々な決済を最終的に処理する場となっている。例えばわが国の場合、個人間の送金は民間の「全銀システム」に持ち込まれ、各銀行の受払い差額が算出されるが、この差額は各銀行が日本銀行に設けた当座預金口座への入金や引落しにより決済されている。

3.日銀当座預金の決済では、「即時グロス決済(Real Time Gross Settlement、以下RTGS)」と「時点決済」のいずれもが利用可能な作りとなっているが、これまでのところは、大半の取引が時点決済されている。しかし、「時点決済」は、参加者が1つでも決済不履行に陥ると、システム全体の運行がストップしてしまうという問題があり、上述のような金融環境の変化に照らして必ずしも適当とは言い難い仕組みである。このため日本銀行は、日銀当座預金における時点決済を廃止し、いわゆる「RTGS化」を行うことが適当と判断し、今後当座預金取引先や民間決済システムの運営者と協議しつつ、その実現に向けて努力していくこととした。このペーパーは、日銀当座預金決済の「RTGS化」が必要であることを説明した上で、「RTGS化」の大まかな枠組みに関する日本銀行の提案をとりまとめたものである。

4.以下、第1部ではRTGSとは何か、どんな長所・短所があり、各国でどのように採用されているか、について解説した。第2部では日銀の当座預金決済に関し、現状やその問題点、「RTGS化」の必要性、考えられるRTGSの姿について説明している。なお、日本銀行は、当ペーパーに記した考え方に関し、当座預金取引先の各金融機関、金融団体および民間決済システムの運営者から、ご意見・ご提案をいただきたいと考えている。具体的なご意見・ご提言の送付先等については第3部で取りまとめた。