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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2018年1月22、23日開催分)

2018年3月14日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2018年3月8、9日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2018年1月22日(14:00~15:28)
 
1月23日( 9:00~12:07)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
岩田規久男(副総裁)
中曽 宏 (  副総裁  )
原田 泰 (審議委員)
布野幸利 (  審議委員  )
櫻井 眞 (  審議委員  )
政井貴子 (  審議委員  )
鈴木人司 (  審議委員  )
片岡剛士 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
財務省 可部 哲生 大臣官房総括審議官(22日)
木原 稔  財務副大臣(23日)
 
内閣府 前川 守  内閣府審議官(22日)
越智 隆雄 内閣府副大臣(23日)
(執行部からの報告者)
理事 雨宮正佳
理事 桑原茂裕
理事 前田栄治
企画局長 加藤 毅
企画局審議役 千田英継(22日14:44~15:28)
企画局政策企画課長 奥野聡雄
金融市場局長 清水誠一
調査統計局長 関根敏隆
調査統計局経済調査課長 一上 響
国際局長 中田勝紀
(事務局)
政策委員会室長 小野澤洋二
政策委員会室企画役 中本浩信
企画局企画調整課長 鈴木公一郎(22日14:44~15:28)
企画局企画役 永幡 崇
企画局企画役 長野哲平
企画局企画役 井出穣治

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(2017年12月20、21日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、長期国債の買入れ等による資金供給を行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は概ね-0.05~-0.03%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、直近では-0.1%台半ばで推移している。

株価(日経平均株価)は、米国株価の上昇や企業業績への期待などから上昇し、直近では23千円台後半で推移している。為替相場をみると、各国通貨の対ドル相場が総じてドル安方向の動きとなる中、円の対ドル相場も、幾分円高・ドル安方向での推移となっている。この間、円の対ユーロ相場は、概ね横ばい圏内で推移している。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、総じてみれば緩やかな成長が続いている。

米国経済は、雇用・所得環境の着実な改善を背景として、家計支出を中心に、しっかりとした回復を続けている。輸出は緩やかな増加基調にあるほか、設備投資も増加している。物価面をみると、インフレ率(PCEデフレーター)は、総合ベース、コアベースともに前年比+1%台半ばで推移している。

欧州経済は、着実な回復を続けている。輸出は、緩やかに増加している。個人消費は、労働市場や消費者コンフィデンスの改善などに支えられて増加基調にあるほか、設備投資も緩やかな増加基調にある。物価面をみると、インフレ率(HICP)は、総合ベースは前年比+1%台半ばで、コアベースは同+1%台前半で推移している。この間、英国経済は、物価の上昇が個人消費の重石となっており、回復ペースが鈍化している。

新興国経済をみると、中国経済は、当局による景気下支え策の効果もあって、総じて安定した成長を続けている。物価面をみると、インフレ率(CPI)は、前年比+1%台後半で推移している。NIEs・ASEANでは、輸出が増加基調にあるもとで、企業・家計のマインドは改善しており、内需は底堅く推移している。ロシアやブラジルの景気は、インフレ率の落ち着きなどを背景に緩やかに回復している。インドでは、新たな物品サービス税導入の影響による経済の混乱は終息に向かっており、景気は緩やかに回復している。

海外の金融市場をみると、米欧の長期金利は、市場予想を上回る経済指標や原油高等に伴うインフレ期待の高まりなどを背景に、上昇した。この間、堅調な企業業績や米国における税制改革法案成立などが好感され、先進国の株価は高値圏で推移しているほか、新興国への資金流入も続いている。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。

輸出は、海外経済の成長を背景に、増加基調にある。先進国向けは、振れを均せば増加基調を続けているほか、新興国向けも、アジア向けの電子部品や中間財、資本財など幅広く持ち直している。先行きの輸出は、資本財や情報関連が堅調に推移すると見込まれることから、当面、増加基調を続ける可能性が高く、その後も、海外経済の成長が続くもとで、基調としては緩やかな増加を続けるとみられる。

公共投資は、高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。先行きについては、2016年度の大型経済対策の押し上げ効果の減衰に伴い減少に転じたあと、オリンピック関連工事などが下支えとなり、高めの水準を維持するとみられる。

設備投資は、企業収益や業況感が改善する中で、増加傾向を続けている。先行指標である機械受注や建築着工・工事費予定額(民間非居住用)は、月々の振れを伴いつつも、増加基調を続けている。先行きの設備投資は、企業収益の改善や緩和的な金融環境、成長期待の高まりなどを背景に、当面、増加を続けていくとみられる。その後は、資本ストックの積み上がりが明確となることなどから、減速圧力が強まってくると考えられる。

雇用・所得環境をみると、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得も緩やかに増加している。有効求人倍率は着実な改善傾向を辿っているほか、失業率も2%台後半まで低下している。

個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。各種の販売・供給統計を合成した消費活動指数をみると、7~9月は天候不順の影響などから減少したが、10月以降は再び増加に転じている。先行きの個人消費は、雇用者所得の増加や株価上昇による資産効果に加え、耐久財の買い替え需要にも支えられて、緩やかな増加傾向を辿るとみられる。

住宅投資は、横ばい圏内の動きとなっている。

鉱工業生産は、内外需要の増加を背景に、増加基調にある。先行きについては、内外需要の増加を反映して、当面は、しっかりとした増加を続ける可能性が高く、その後も、海外経済が成長するもとで、基調としては緩やかな増加を続けるとみられる。

物価面について、国内企業物価(夏季電力料金調整後)を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、このところ1%程度のプラスが続いている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっているが、除く生鮮食品・エネルギーでみた前年比は、小幅のプラスにとどまっている。先行きについて、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくとみられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。

予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。長期金利から中長期の予想物価上昇率を差し引いた実質長期金利は、マイナスで推移している。

企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、大幅に緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。資金需要面をみると、企業買収関連や設備投資向けなどの資金需要が増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台半ばのプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、高めのプラスで推移している。企業の資金繰りは、良好である。

この間、マネタリーベースは、前年比で1割台前半の高い伸びを続けている。マネーストックの前年比は、3%台後半の伸びとなっている。

II.貸出支援基金等の今後の取扱い

1.執行部からの説明

貸出増加や成長基盤の強化に向け、金融機関と企業・家計の前向きな行動を引き続き促していくとともに、復興に向けた被災地金融機関の取り組みへの支援を継続する観点から、「貸出増加を支援するための資金供給」、「成長基盤強化を支援するための資金供給」、東日本大震災および熊本地震にかかる「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」等の措置について、受付期間を1年間延長することとしたい。ついては、「貸出支援基金運営基本要領」の一部改正等を行うこととしたい。

2.委員会の検討・採決

採決の結果、上記案件について全員一致で決定された。本件については、その骨子を対外公表文に記載することとされた。また、その詳細については、会合終了後、執行部より適宜の方法で公表することとされた。

III.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、堅調な経済指標などを背景に、米欧の長期金利は上昇しているとの認識を共有した。また、多くの委員は、長期金利が上昇する中にあっても、企業収益の増加期待や米国における税制改革法案の成立などを材料に、先進国の株価は高値圏で推移しているほか、新興国への資金流入も続いており、投資家のリスクテイク姿勢は総じて維持されているとの見方を共有した。そのうえで、何人かの委員は、史上最高値を更新している米国の株価について、市場では、バリュエーション指標などからみた割高感を指摘する声が増えてきていると指摘した。また、一人の委員は、米国における事業法人向け信用残高が増加を続けていることなどを踏まえると、長期金利の動向にも留意が必要との見方を示した。こうした議論を経て、何人かの委員は、米国の株価や長期金利の動向は、グローバルな金融市場の動向に大きな影響を与え得るため、引き続き、しっかりとみていく必要があると述べた。

海外経済について、委員は、総じてみれば緩やかな成長が続いているとの認識を共有した。委員は、世界的に製造業の生産・貿易活動が活発化する中、先進国は着実な回復を続け、新興国も全体として緩やかに回復しているとの見方で一致した。一人の委員は、最近の製造業の回復は、循環的な要因だけでなく、IoTやAIといった新規のテクノロジーと結びついた新たな需要が発掘されていることも相応に影響しているとの見解を述べた。海外経済の先行きについて、委員は、先進国の着実な成長に加え、その好影響の波及や各国の政策効果によって、新興国経済の回復もしっかりとしたものになっていくことから、緩やかな成長を続けるとの見方で一致した。

地域毎にみると、米国経済について、委員は、実質GDP成長率がこのところ前期比年率3%台前半の伸びを続けるなど、家計支出を中心に、しっかりとした回復を続けているとの認識で一致した。米国経済の先行きについて、委員は、国内民間需要を中心にしっかりとした成長が続くとの認識を共有した。一人の委員は、今後とも、個人消費や設備投資を中心に、潜在成長率を上回る成長が続くとみられるほか、ハリケーンの影響などから落ち込んでいた住宅投資も、持ち直しが見込まれると付け加えた。

欧州経済について、委員は、内外需ともに緩やかに増加しており、着実な回復を続けているとの認識を共有した。ある委員は、難民やテロ問題に直面しているにもかかわらず、消費者コンフィデンスは改善を続け、個人消費は一貫して底堅く推移していると指摘した。欧州経済の先行きについて、委員は、英国のEU離脱交渉の展開などを巡る不透明感が経済活動の重石となるものの、緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。

新興国経済について、委員は、全体として緩やかに回復しているとの認識を共有した。このうち中国経済について、委員は、前年比6%台後半の実質GDP成長率が維持されるなど、総じて安定した成長を続けているとの見方で一致した。一人の委員は、昨年10月の共産党大会後も経済に変調はみられていないとしたうえで、当面は、小型車に対する減税措置の終了が自動車販売にどのような影響を与えるかに注目していると述べた。NIEs・ASEANについて、委員は、輸出が増加基調にあるもとで、企業・家計のマインド改善や景気刺激策の効果などから、内需も底堅く推移しているとの見方で一致した。ロシアやブラジルなどの資源国についても、委員は、インフレ率の落ち着きや金融緩和の効果などから緩やかに回復しているとの認識を共有した。先行きの新興国経済について、委員は、先進国の着実な成長の波及や景気刺激策の効果などから、経済の回復もしっかりとしたものになっていくとの見方で一致した。このうち中国経済について、委員は、当局が財政・金融政策を機動的に運営するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとの認識を共有した。

わが国の金融環境について、委員は、きわめて緩和した状態にあるとの認識で一致した。委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているほか、大企業、中小企業のいずれからみても、金融機関の貸出態度は引き続き積極的であるとの見方を共有した。

以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大しているとの見方で一致した。委員は、企業部門の動きについて、輸出は増加基調にあるほか、設備投資も、収益が過去最高水準で推移する中、増加傾向を続けているとの認識を共有した。また、家計部門についても、委員は、個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加しているとの見方を共有した。このほか、複数の委員は、最近の短観や支店長会議における報告を踏まえると、景気拡大の裾野が、大都市から地方、大企業から中小企業へと着実に拡がっていることが、改めて確認されたと述べた。一人の委員は、需要の増加が、企業の生産性向上に向けた取り組みや能力増強を企図した設備投資、労働力率の上昇など、経済の供給面の拡大を後押ししているとの認識を示した。そのうえで、この委員は、供給面の拡大に伴い、経済の中長期的な成長力が高まりつつあると述べた。

輸出について、委員は、海外経済の成長を背景に、増加基調にあるとの認識を共有した。ある委員は、このところアジア向けの電子部品や中間財などが大きく伸びており、昨年11月の実質輸出は、リーマン・ショック前の水準を超えて、過去最高を記録したと付け加えた。先行きの輸出について、委員は、グローバルな製造業の生産・貿易活動が良好な水準を維持するもとで、当面は増加基調を続ける可能性が高く、その後も、海外経済の成長を背景に、基調としては緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。

公共投資について、委員は、高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しているとの認識を共有した。

設備投資について、委員は、企業収益や業況感が改善する中で、増加傾向を続けているとの認識を共有した。複数の委員は、人手不足に対処するための省力化・合理化投資に加え、AI向け等の情報通信関連投資や、工場の増設等の能力増強に主眼を置いた投資も増えつつあるとの見方を示した。先行きの設備投資について、委員は、緩和的な金融環境や成長期待の高まりなどを背景に、増加を続けていくとの見方で一致した。この間、一人の委員は、設備投資の拡大は続いているものの、企業のキャッシュフローに対する割合は依然として大きいとは言えず、資本設備にはなお余剰感が残存していると述べた。この点に関し、別のある委員は、労働需給が益々タイト化していく中、中小企業を中心に、今後とも、生産性を引き上げるためのソフトウェア投資等が継続すると見込まれることから、それとともに、先行き、企業の総資産に占める現預金の比率は低下していくとの見方を示した。

雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得も緩やかに増加しているとの認識を共有した。何人かの委員は、11月の有効求人倍率は1.56倍と1974年以来の高水準となっているほか、失業率も2.7%まで低下するなど、労働市場は一段とタイト化していると指摘した。また、何人かの委員は、本年の春闘の交渉過程やその結果が、正規雇用者の賃金上昇や消費活動の一段の改善にどう結びついていくのか、注目していると述べた。

個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加しているとの認識を共有した。複数の委員は、天候要因等により、消費活動指数は昨年夏場に減少したが、10月以降、サービスや非耐久財を中心に持ち直しており、消費の増加基調は崩れていないとの見解を示した。先行きの個人消費について、委員は、雇用者所得の増加と株価上昇による資産効果に加え、耐久財の買い替え需要にも支えられて、緩やかな増加傾向を辿るとの見方を共有した。この間、一人の委員は、最近のガソリン価格の上昇が、自動車が主たる交通手段である地方の家計マインドにマイナスの影響を及ぼす可能性を指摘した。また、別のある委員は、先行き、消費が活性化していくためには、現役世代における退職後の生活不安の軽減・解消に向けて、今後、わが国の社会保障制度がどのように改革されるかが重要であるとの認識を示した。

住宅投資について、委員は、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。

鉱工業生産について、委員は、内外需要の増加を背景に、増加基調にあるとの認識を共有した。先行きの鉱工業生産について、委員は、内外需要の増加を反映して、当面はしっかりとした増加を続け、その後も、海外経済が成長するもとで、基調としては緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は1%程度のプラスとなっている一方、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比については、引き続き、企業の価格引き上げの動きが限定的であることなどから、小幅のプラスにとどまっているとの見方で一致した。こうした弱めの動きについて、委員は、携帯電話通信料の値下げといった一時的要因もあるが、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることが影響しているとの認識を共有した。この間、委員は、予想物価上昇率について、これまでの「弱含みの局面が続いている」との判断を一歩進め、「横ばい圏内で推移している」と評価することが適当との認識で一致した。その理由として、何人かの委員は、企業や家計のインフレ予想がこのところ下げ止まり傾向にあるほか、市場参加者のインフレ予想も上向いてきていることを指摘した。

2.経済・物価情勢の展望

2018年1月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の作成にあたり、委員は、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、緩やかな拡大を続けるとの見方を共有した。2018年度までの期間について、委員は、きわめて緩和的な金融環境や政府の既往の経済対策による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要は増加基調を辿るとの認識を共有した。また、委員は、輸出も、海外経済の成長を背景として、基調として緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。2019年度について、委員は、内需の減速から成長ペースは鈍化するものの、外需に支えられて、景気拡大が続くとの認識を共有した。こうした議論を経て、委員は、わが国の経済は、2018年度までの期間を中心に、潜在成長率を上回る成長を続けるとの見方を共有した。そのうえで、委員は、2017年10月の展望レポートでの見通しと比べると、見通し期間の成長率は、概ね不変であるとの見方で一致した。

2018年度にかけての景気について、委員は、設備投資は、緩和的な金融環境や成長期待の高まり、オリンピック関連投資の本格化、人手不足に対応した省力化投資の増加などから、増加を続けるとの見方を共有した。個人消費についても、委員は、雇用・所得環境の改善が続くもとで、緩やかな増加傾向を辿るとの認識で一致した。公共投資については、既往の経済対策による押し上げ効果が緩やかに減衰するものの、オリンピック関連需要などもあって高めの水準を維持するとの見方で一致した。2019年度について、委員は、設備投資は、景気拡大局面の長期化による資本ストックの積み上がりやオリンピック関連需要の一巡などから減速するほか、個人消費も、下期には消費税率引き上げの影響から減少に転じるとの認識で一致した。そのうえで、委員は、海外経済の成長を背景とした輸出の増加が景気を下支えするとの見方を共有した。この間、消費税率の引き上げが実体経済に与える影響について、委員は、2014年度の前回増税時と比べると小幅なものにとどまるとみられるが、その時々の所得環境や物価動向にも左右されるなど不確実性は大きいとの認識を共有した。

委員は、実体経済から物価面への波及に関し、労働需給の着実な引き締まりに比べ、物価が弱めの動きを続けていることについて議論を行った。委員は、企業や家計において、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っていることが、企業の賃金・価格設定スタンスに影響しているとの認識を共有した。賃金の設定スタンスについて、何人かの委員は、わが国では、労使ともに賃上げよりも雇用の安定を優先する傾向が強いことが、正規雇用者の賃金の伸びが鈍い理由の一つであるとの見方を示した。複数の委員は、米欧でも、リーマン・ショック後に大量の失業が生じた経験などから、近年、労働組合の間で賃金の上昇率よりも雇用の安定を優先する意識が強まっており、こうした傾向は日本固有のものではないと指摘した。企業の価格設定スタンスについて、複数の委員は、生産性の引き上げ余地が大きいサービス業を中心に、省力化投資やビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を価格に転嫁することを避ける動きが続いていると指摘した。この間、ある委員は、男性の就業率がいまだ低いことや、失業率が相対的に高い若年労働者の比重が過去に比べて低くなっていることを踏まえると、十分な賃金の上昇を実現し、2%の「物価安定の目標」を達成するためには、現状の失業率がさらに低下する必要があるとの見方を示した。

そのうえで、多くの委員は、物価を取り巻く環境に、いくつか前向きの変化もみられてきていることについて議論を行った。何人かの委員は、人手不足の強まりが、パートのみならず、正規雇用者の賃金上昇圧力としても作用してきており、新卒の初任給を引き上げる企業も増えてきていると指摘した。何人かの委員は、政府による3%の賃上げ要請や、これを後押しする各種施策が打ち出されたことも、賃上げに向けた前向きな雰囲気を醸成していると付け加えた。また、何人かの委員は、最近では、賃金コストの上昇を販売価格に転嫁する動きが次第に増えてきており、それが売上や収益の増加につながっているケースも少なくないとの認識を示した。こうした変化の背景として、複数の委員は、雇用・所得環境の改善や株価上昇に伴うマインドの好転などから、消費者の値上げに対する許容度が高まってきている可能性を指摘した。このほか、複数の委員は、このところ、予想物価上昇率の指標が下げ止まりや上昇を示していることについても、こうした現実の物価の動きが影響しているとの見方を示した。こうした議論を経て、ある委員は、予想以上に時間を要した面はあるが、これまで想定していた物価上昇のメカニズムに沿った前向きの動きが、次第に現実のものとなってきていると述べた。

委員は、物価情勢の先行きについて議論を行った。大方の委員は、消費者物価の前年比は、エネルギー価格上昇の影響を除くとなお弱めの動きが続いているが、先行きについては、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくとの見方を共有した。これらの委員は、2017年10月の展望レポートでの見通しと比べると、見通し期間の物価上昇率は、概ね不変であるとの見方で一致した。そのうえで、これらの委員は、消費者物価の前年比が2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高いとの認識を共有した。

さらに、委員は、消費者物価の前年比が2%に向けて上昇率を高めていくメカニズムについて具体的に議論した。まず、大方の委員は、労働需給の着実な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に、マクロ的な需給ギャップは着実にプラス幅を拡大しているとの見方で一致した。先行きについても、大方の委員は、わが国経済が緩やかな拡大を続けるもとで、マクロ的な需給ギャップは2018年度にかけてプラス幅をさらに拡大し、2019年度も比較的大幅なプラスで推移するとの認識を共有した。次に、大方の委員は、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向を辿り、2%程度に向けて次第に収斂していくとの認識を共有した。これらの委員は、その背景として、(1)「適合的な期待形成」の面では、マクロ的な需給ギャップが改善していく中で、企業の賃金・価格設定スタンスも次第に積極化し、現実の物価上昇率も着実に伸びを高めると考えられること、(2)「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことを指摘した。

これらの議論に対し、一人の委員は、資本・労働市場ともに供給余力が残存しており、いずれも2%の「物価安定の目標」を達成するに足る状況はまだ遠いとの見解を示した。そのうえで、この委員は、需給ギャップや予想インフレ率が物価を押し上げる動きが十分に働いているとは言い難く、依然低水準にとどまっている中長期の予想インフレ率の動きを踏まえると、トレンドインフレ率が2%に向けて明確に上昇するとの確信を持てる状況にはないとの見解を示した。

委員は、経済・物価情勢の先行きの中心的な見通しに対する上振れ・下振れ要因についても議論を行った。まず、実体経済面の上振れ・下振れ要因として、委員は、(1)海外経済の動向、(2)企業や家計の中長期的な成長期待、(3)財政の中長期的な持続可能性、の3点を挙げた。このうち海外経済の動向について、委員は、欧州周縁国の債務格付けの引き上げや不良債権処理の進捗などを踏まえると、金融セクターを含め、欧州債務問題にかかるリスクは、一頃よりもかなり低減してきているとの認識を共有した。一方、多くの委員は、米国の経済政策運営や地政学的なイベントが、株価の調整や長期金利の変動などにつながり得るリスクには、引き続き留意が必要との見方を示した。そのうえで、委員は、経済の見通しについては、リスクは概ね上下にバランスしているとの認識で一致した。

次に、物価に固有の上振れ・下振れ要因として、委員は、(1)企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向、(2)マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が低い品目の存在、(3)今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、の3点を挙げた。このうち、中長期的な予想物価上昇率の動向について、委員は、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくるまでに時間がかかり、物価が弱めの推移を続ける場合には、予想物価上昇率の高まりが遅れるリスクがあるとの見方で一致した。また、委員は、差別化の難しい財・サービスの価格について、流通形態の変化や規制緩和等によって、競争環境が一段と厳しくなる場合には、物価上昇を抑制する可能性があるとの見方を共有した。この点に関し、複数の委員は、既存の大型小売店舗とオンラインショッピングとの競合激化は、先行きの物価下振れ要因として特に意識しておく必要があると付け加えた。そのうえで、委員は、物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きいとの認識を共有した。

IV.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢についての認識を踏まえ、委員は、当面の金融政策運営に関する議論を行った。

金融政策運営にあたって、大方の委員は、企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっている点は注意深く点検していく必要があるが、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているとの認識を共有した。この背景として、大方の委員は、(1)マクロ的な需給ギャップが着実に改善していく中で、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、(2)中長期的な予想物価上昇率は、このところ横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、着実に上昇すると考えられること、の2点を挙げた。これらを踏まえ、大方の委員は、現在の金融市場調節方針のもと、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適切であるとの認識を共有した。多くの委員は、2%の「物価安定の目標」の実現までにはなお距離があることを踏まえると、今後とも、現在のきわめて緩和的な金融環境を維持していくことが必要であるとの見解を示した。また、一人の委員は、しつこいデフレマインドを踏まえると、「適合的な期待形成」を通じた予想物価上昇率の引き上げにはかなりの時間を要する可能性もあることから、強力な金融緩和を粘り強く続けることで、物価に現れ始めた明るい動きを持続的に支えていくことが必要であると述べた。このほか、ある委員は、わが国では、米欧と異なりインフレ期待が2%の水準にしっかりとアンカーされていないことが、企業の慎重な価格設定スタンスにつながっていると指摘したうえで、今後とも腰を据えて、現在の金融緩和を続けていくことが重要であると述べた。

委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについても議論を行った。何人かの委員は、現在の金融緩和政策の効果と副作用について、金融仲介機能や金融システムに及ぼす影響も含めて、多面的な点検・評価を継続していくことが重要であると指摘した。このうちの一人の委員は、現時点では、金融システムや金融機関の金融仲介機能に支障は生じていないが、米国債のイールドカーブのフラット化や外貨調達コストの上昇などの国内外の市場環境の変化と、これが金融機関の収益や金融システムに及ぼす影響には留意が必要であるとの見方を示した。ある委員は、やや長い目でみて、銀行セクターの収益と貸出態度の間には正の相関があることを踏まえると、低金利環境が続くもとでの金融機関の貸出運営スタンスにも意識を向けていく必要があると述べた。これに対して、別の一人の委員は、金利を引き下げると銀行の貸出意欲が低下し、金融緩和効果が阻害するというリバーサル・レートの議論は、資金調達手段の一部を供給側からのみとらえたものであり、企業の他の代替的資金調達手段や借入需要の増加を十分に考慮していない議論であると指摘した。また、ある委員は、今後、2%に向けて物価が上昇していき、経済の中長期的な成長力が高まっていく過程では、金融緩和政策の効果が強まることになるため、そうした環境変化や政策の副作用も考慮しながら、先行き、望ましい政策運営のあり方について、検討していくことも必要となり得るとの見解を述べた。一人の委員は、現時点では、現在の金融市場調節方針を維持することが適切であるとしつつ、先行き、経済・物価情勢の改善が続くと見込まれる場合には、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで、その持続性を強化する観点も含め、金利水準の調整を検討することが必要になる可能性もあると述べた。別のある委員は、現在の金融市場調節方針を続けることで、物価上昇率が2%に向けて上昇するとの確信が持てない以上、現在の政策の枠組みのもとで、さらなる金融緩和策を講じることにより、需給ギャップや予想インフレ率への波及効果を一段と強め、「物価安定の目標」の早期達成への確度を高めるべきであるとの見解を示した。

この間、ある委員は、このところ、海外投資家を中心に、金融緩和が早期に微修正されるとの声が聞かれているが、2%の「物価安定の目標」の実現まで距離がある現状では、そうした期待が高まることは好ましくないとの見解を示した。この点に関し、多くの委員は、米欧において金融政策が正常化に向かう中、市場は、日本銀行の金融政策運営に関して、従来より敏感になっていると指摘した。そのうえで、これらの委員は、引き続き、丁寧な情報発信に努めていくことが重要であるとの認識を示した。

このほか、ある委員は、わが国がデフレを脱却し、持続的成長を実現するためには、中長期的な財政の持続可能性に配慮しつつ、政府と日本銀行が一体となって、マクロ経済政策運営を強力に推進することが重要であるとの見方を示した。そのうえで、この委員は、政府債務残高対GDP比率の高さや急速な高齢化による将来の財政支出の増加を考えると、財政赤字を拡大させ続けることにはリスクがあるが、財政緊縮のスピードを調整することで、デフレ脱却に向けた財政政策と中長期的な財政の持続可能性の維持とを両立させる余地があると述べた。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合以降、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。この間、何人かの委員は、1月9日の超長期ゾーンの国債買入れオペの減額に関し、その時点での国債市場の需給等を踏まえて実務的に決定されたにもかかわらず、市場の一部では、これが金融緩和縮小の思惑を呼び、為替円高の一因になったのとの見方があると指摘した。そのうえで、委員は、オペの金額やタイミングは、金融政策決定会合で決定された金融市場調節方針に沿って実務的に決まるものであり、オペの運営が先行きの政策スタンスを示すことはないということを、海外投資家も含めて繰り返し説明していく必要があるとの認識で一致した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。」

これに対し、ある委員は、消費税増税や米国の景気後退などのリスク要因を考慮すると、2018年度中に物価上昇率が2%に到達し、2019年度には2%をオーバーシュートする状況を目指すべきであり、そのために10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとの意見を述べた。そのうえで、この委員は、仮に、超長期ゾーンの金利水準や国債買入れオペの減額が金融政策について意図せざるシグナル効果を持つのであれば、これを是正するためにも、一段の緩和措置は有効であると付け加えた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行うこと、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持すること、が適当であるとの認識を共有した。そのうえで、ある委員は、株価や企業収益などが大きく改善していることや、今後も堅調に推移すると見込まれることを踏まえると、ETFをはじめとするリスク性資産の買入れについては、「物価安定の目標」を実現するための政策パッケージの一要素として行っていることを認識しつつ、その政策効果と考え得る副作用について、あらゆる角度から検討すべきであると述べた。

先行きの金融政策運営の考え方について、大方の委員は、(1)2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、(2)消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する、(3)今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行うとの方針を共有した。

これに対し、一人の委員は、オーバーシュート型コミットメントを強化する観点から、今後、展望レポートにおける消費者物価指数の政策委員見通しの中央値について、国内要因により「物価安定の目標」の達成時期が後ずれする場合には、何らかの追加緩和手段を講じるという新たなコミットメントを導入することが適当であると述べた。

V.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 昨日1月22日、平成30年度予算および平成29年度補正予算を国会に提出した。
  • 平成30年度予算は、保育の受け皿拡大や地域の中核企業による設備・人材投資等の促進等の重要課題に重点化しつつ、一般歳出の水準等の「目安」を達成し、公債の発行額を安倍内閣発足以来6年連続で減額するなど、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算となっている。平成29年度補正予算においては、生産性革命・人づくり革命、災害復旧等・防災・減災事業、総合的なTPP等関連政策大綱実現に向けた施策などの2.7兆円の歳出の追加等を行っている。経済の好循環をより確かなものとし、持続的な経済成長を実現するためにも、本予算の一刻も早い成立を目指していく。
  • 日本銀行が、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。

また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  • わが国の景気は、緩やかに回復している。輸出や生産、設備投資など企業部門に一層の改善がみられるとともに、家計部門においても雇用情勢が着実に改善し、個人消費が持ち直している。このように、企業部門のみならず、家計部門でも改善の動きが拡がっていることを踏まえて、先週1月19日、7か月ぶりに政府の景気判断を引き上げている。先行きは、雇用・所得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。物価動向の判断には、GDPデフレーターを含め、各種物価指標を総合的にみることが重要である。
  • 今後、これまでの改革の取り組みを経済財政諮問会議において十分精査し、本年夏の骨太方針において、プライマリーバランス黒字化の達成時期およびその裏付けとなる計画を示していく。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の「物価安定の目標」の実現に向け、着実に取り組むことを期待する。加えて、金融政策運営の状況や物価の見通しなどについて、引き続き、経済財政諮問会議等の場で十分説明いただきたい。

VI.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。

採決の結果

賛成:
黒田委員、岩田委員、中曽委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員
反対:
片岡委員

片岡委員は、消費税増税や米国景気後退などのリスク要因を考慮すると、2018年度中に「物価安定の目標」を達成することが望ましく、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2 兆円、約3.2 兆円の残高を維持する、との資産買入れ方針とすることを内容とする議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

採決の結果

賛成:
黒田委員、岩田委員、中曽委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員
反対:
なし

3.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

以上の採決結果を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、オーバーシュート型コミットメントを強化する観点から、国内要因により「物価安定の目標」の達成時期が後ずれする場合には、追加緩和手段を講じることが適当であり、これを公表文中に記述することが必要との意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

VII.「経済・物価情勢の展望」の検討

続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、多数意見が形成された。

議長からは、こうした多数意見を取りまとめるかたちで、「基本的見解」の議案が提出された。

採決の結果、賛成多数で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、1月24日に公表することとされた。なお、片岡委員は、消費者物価の前年比について、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとの理由から、物価の見通しに関する記述に反対した。

採決の結果

賛成:
黒田委員、岩田委員、中曽委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員
反対:
片岡委員

VIII.議事要旨の承認

議事要旨(2017年12月20、21日開催分)が全員一致で承認され、1月26日に公表することとされた。

以上


  • (注)「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。」 本文に戻る

別紙

2018年1月23日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した(注1)
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注2)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. (1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。
      2. (2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。
  2. また、日本銀行は、「貸出増加を支援するための資金供給」、「成長基盤強化を支援するための資金供給」、東日本大震災および熊本地震にかかる「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」等の措置について、受付期間を1年間延長することを決定した(全員一致)。

以上


  1. (注1)片岡委員は、オーバーシュート型コミットメントを強化する観点から、国内要因により「物価安定の目標」の達成時期が後ずれする場合には、追加緩和手段を講じることが適当であり、これを本文中に記述することが必要として反対した。 本文に戻る
  2. (注2)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:片岡委員。片岡委員は、消費税増税や米国景気後退などのリスク要因を考慮すると、2018年度中に「物価安定の目標」を達成することが望ましく、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した。 本文に戻る