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金融政策決定会合議事要旨

(2005年 8月 8、 9日開催分) *

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2005年9月7、8日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

2005年 9月13日
日本銀行

(開催要領)

1.開催日時
2005年8月8日(14:00〜15:31)
8月9日( 9:00〜11:43)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 福井俊彦(総裁)
  • 武藤敏郎(副総裁)
  • 岩田一政(  副総裁  )
  • 須田美矢子(審議委員)
  • 中原 眞(  審議委員  )
  • 春 英彦(  審議委員  )
  • 福間年勝(  審議委員  )
  • 水野温氏(  審議委員  )
  • 西村清彦(  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 財務省 杉本 和行 大臣官房総括審議官
  • 内閣府 浜野 潤  政策統括官(経済財政運営担当)(8日)
    藤岡 文七 大臣官房審議官(経済財政運営担当)(9日)

(執行部からの報告者)

  • 理事平野英治
  • 理事白川方明
  • 理事山本 晃
  • 企画局長山口廣秀
  • 企画局企画役内田眞一
  • 金融市場局長中曽 宏
  • 調査統計局長早川英男
  • 調査統計局参事役門間一夫
  • 国際局審議役高橋 亘

(事務局)

  • 政策委員会室長中山泰男
  • 政策委員会室審議役神津多可思
  • 政策委員会室企画役村上憲司
  • 企画局企画役白塚重典
  • 企画局企画役武田直己

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節は、前回会合(7月27日)で決定された方針1に従って運営した。この結果、当座預金残高は、7月29日、8月3日、4日、5日に目標値の下限を下回ったほかは、30〜31兆円台で推移した。

  1. 「日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。」

2.金融・為替市場動向

 短期金融市場では、無担保コールレート翌日物(加重平均値)は、ゼロ%近傍で推移している。ターム物レートも、低位で推移している。こうした中、ユーロ円金利先物レートは小幅上昇している。

 株価は、内外経済指標の予想比上振れや米国株価の堅調などを受けて上昇した後、政局の不透明感の高まり等を背景に下落に転じ、日経平均株価でみると、足もと11千円台後半で推移している。

 長期金利は、内外経済指標を眺めた景況感の改善等を受けて上昇し、足もとは1.3%台後半で推移している。

 為替相場をみると、円の対米ドル相場は、米国との金利差拡大見通しや中国人民元追加切り上げを巡る思惑などを背景にもみ合いとなり、最近では111〜112円台で推移している。

3.海外金融経済情勢

 米国では、家計支出や設備投資を中心とした潜在成長率近傍の着実な景気拡大が続いている。インフレ率は、ここ数ヶ月騰勢がやや一服した格好となっているが、緩やかながらも着実な上昇傾向にある。

 ユーロエリアは、輸出が持ち直しつつあるが、家計支出の増勢は減衰しており、なお停滞感が根強い。

 東アジアをみると、中国では、内外需とも力強い拡大が続いている。中国の輸入は、一部業種における在庫調整や景気過熱抑制策の浸透に伴う新規投資の増勢鈍化などから伸びが大幅に鈍化してきたが、足もと復調の兆しがみられる。NIEs、ASEAN諸国・地域では、緩やかな景気拡大が続いている。

 米欧の金融資本市場をみると、市場予想比強めの経済指標や企業決算を背景に、長期金利は若干上昇し、株価は強含みで推移した。エマージング金融資本市場では、多くの国・地域で、為替相場や株価が小動きながらも総じて堅調に推移した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 輸出は、中国向けが伸び悩んでいるものの、海外経済が拡大基調を続けるもとで、緩やかながら増加している。先行きは、海外経済が米国、東アジアを中心に拡大を続け、IT関連分野での調整圧力も一巡するとみられることから、次第に伸びが高まっていくと予想される。

 企業部門の動向をみると、設備投資は、高水準の企業収益を背景に、増加を続けている。先行きも、内外需要の増加や高水準の企業収益が続く見込みのもとで、引き続き増加すると予想される。

 生産は、IT関連分野の在庫調整が進むもとで、振れを伴いつつも増加傾向にある。4〜6月の鉱工業生産は、小幅の減少となったが、これには鋼船や医薬品を巡る統計的な振れが影響しているとみられ、均してみれば緩やかな増加傾向にある。先行き7〜9月も、内外需要の増加やIT関連分野の調整進展から、緩やかな増加となる見通しである。

 在庫は、長い目でみれば低水準ながら、足もとは横ばいの動きとなっている。電子部品・デバイスの在庫調整は、1〜3月に大きく進展した後、4〜6月は小幅の改善にとどまったが、基調としては着実に進捗しているとみられる。

 雇用・所得環境をみると、労働需給を反映する求人関連指標や失業率は改善傾向にあり、雇用者数は増加を続けている。賃金面では、特別給与が増加しているほか、所定内給与も、パート比率の低下などを反映して、このところ小幅ながら上昇に転じており、一人当たり名目賃金は持ち直している。こうしたもとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続けていく可能性が高い。

 個人消費は、底堅く推移している。家電販売額、全国百貨店売上高が増加しているほか、サービス関連の指標も増加基調にある。先行きも、雇用者所得の緩やかな増加を背景に、着実な回復を続ける可能性が高い。

 国内企業物価は、原油価格の影響などから上昇している。先行きも上昇基調を続ける可能性が高いが、当面の上昇テンポは鈍化するとみられる。消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。先行きも、需給環境の緩やかな改善が続くとみられるものの、電気・電話料金引き下げの影響もあって、当面は小幅のマイナスで推移すると予想される。

(2)金融環境

 企業金融を巡る環境は、総じて緩和の方向にある。民間銀行の貸出姿勢は緩和してきており、企業からみた金融機関の貸出態度も、中小企業を含め、引き続き改善している。そうしたもとで、民間銀行貸出は減少幅が縮小している。

 資本市場調達については、CP・社債とも良好な発行環境が続いており、CP・社債の発行残高は前年並みか前年をやや上回る水準で推移している。

 マネタリーベース、マネーサプライ(M2+CD)の伸び率は、前年比1%台で推移している。

II.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

 わが国の景気について、委員は、IT関連分野における調整が進むもとで、回復を続けており、先行きについても、景気は回復を続けていくとみられるとの認識を共有した。

 海外経済に関して、委員は、米国や東アジアを中心に拡大が続いており、今後も潜在成長率近傍の拡大を続けるとの見方を共有した。このうち何人かの委員は、原油価格上昇が世界経済の成長に与える影響などについては、引き続き注視していく必要があると付け加えた。

 米国経済について、多くの委員は、家計支出と設備投資が着実に増加し、雇用環境も好調を維持しているほか、製造業の景況感にも明るさがうかがわれることから、先行きも潜在成長率近傍の景気拡大が維持できる可能性が高いとの認識を示した。このうち何人かの委員は、長期金利の今後の推移やそのもとでの住宅価格の動向、それらを受けた個人消費の動向には留意する必要があると付け加えた。

 東アジア経済について、多くの委員は、中国では内外需ともに力強い拡大が続いているほか、NIEs、ASEAN諸国・地域でも、緩やかな景気拡大が持続しているとの認識を示した。このうち一人の委員は、中国では国有企業改革が遅れる中、将来的に過剰投資とその後のオーバーキルという大きな景気変動が生じ得る点には注意すべきであると指摘した。また、複数の委員は、人民元改革はこれまでのところ世界経済に限定的な影響しか与えていないが、今後の為替制度の運用如何により変わり得る面もあり、引き続き注意していく必要があると述べた。

 こうしたもとで、わが国の輸出は、中国向けが伸び悩んでいるが、米国やNIEs・ASEAN諸国・地域向けを中心に増加しており、先行きも、海外経済が全体として拡大を続けるとみられるもとで、増加基調をたどるとの見方が共有された。ある委員は、輸出の伸びを支える背景の一つとして、原油価格上昇により実質購買力が増加している中東地域等に対する輸出が高い伸びとなっていることを指摘した。別の一人の委員は、わが国はエネルギー節約型商品に強みがあるので、原油高はわが国の相対的な輸出シェアを高めている面があると指摘した。

 国内民間需要について、委員は、設備投資・個人消費ともに想定より強めの動きが続いているとの見方で一致した。

 企業部門について、委員は、設備投資が増加を続けており、先行きも、内外需要の増加や高水準の企業収益が続くもとで、引き続き増加すると予想されるとの認識を共有した。何人かの委員は、日本政策投資銀行による2005年度設備投資計画調査の結果は幅広い分野における設備投資の増勢を裏付けるものであったと述べた。これに関連して、複数の委員は、最近の設備投資計画は需要動向に影響を受けやすい能力増強投資主体でなく、合理化投資や既存設備の補修・改修投資が中心であることから、その実現性や持続性は高いと考えられると付け加えた。

 委員は、企業部門の好調は、家計部門にも着実に波及しているとの認識を共有した。

 雇用・所得面について、多くの委員は、夏のボーナスの5割強を占める6月の特別給与が前年比増加したほか、パート比率の低下等を背景に所定内給与も若干ながら上昇に転じるなど、雇用者所得は緩やかに増加していると述べた。

 個人消費について、多くの委員は、家電販売額や全国百貨店売上高、サービス消費関連の指標は堅調な動きとなっており、先行きも、雇用者所得の増加に支えられて、着実な回復を続ける可能性が高いとの見解を示した。

 生産面について、多くの委員は、4〜6月の鉱工業生産指数は小幅の減少となったが、これには鋼船や医薬品の統計的な振れも影響しており、実際には緩やかな増加を続けているとみられると述べた。

 IT関連分野の調整に関して、多くの委員は、統計上、4〜6月には在庫調整の進捗を確認できないが、企業ヒアリング情報などを踏まえると、在庫調整は緩やかながら着実に進捗しているとみられるとの見解を示した。ある委員は、自動車等の需要拡大を反映し、それらに使われる情報電子部品は足もとフル生産が続いていると指摘した。この間、複数の委員は、電子部品・デバイスの在庫率の高さには注意していく必要があり、IT関連分野の在庫調整の終了は未だ確認できていないと述べた。

 以上のような議論を踏まえて、多くの委員は、(1) 個人消費や設備投資といった内需がしっかりとした状況が続いているほか、輸出の伸びも回復しつつあること、(2) IT関連分野の在庫調整も着実に進展しているとみられることから、わが国の景気は「踊り場」を脱却したとの見方を示した。ある委員は、内需中心に景気がじわじわと回復した結果、はっきりと段差がつく形で脱却したわけではないが、もはや「踊り場」と呼ぶことが不自然な状況となっていると述べた。この間、何人かの委員は、「踊り場」の背景には、グローバルな製造業の在庫調整があるとしたうえで、米国経済は在庫調整が終了したとみられる一方、わが国では在庫調整の終了が確認できておらず、引き続きGDP統計や鉱工業生産統計等で最終需要の強さを確認すべきであると述べた。このうち一人の委員は、原油価格の高止まり等の不透明要因も注視すべきであると指摘した。

 物価面について、委員は、国内企業物価は、原油価格の高騰を受けて上昇しており、先行きも上昇基調を続ける可能性が高いが、当面そのテンポは鈍化するとの認識を共有した。また、消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比については、6月は小幅のマイナスとなっており、先行きについても、電気・電話料金の引き下げの影響などから、当面は、小幅のマイナスで推移するとの見方で一致した。これに関して、複数の委員は、米の値段や電気・電話料金等の特殊要因を除いたベースでは、消費者物価の前年比はこのところゼロ近傍で推移していると指摘した。そのうえで、何人かの委員は、年末から来年初にかけては、米の値段や電気・電話料金等の特殊要因が剥落する中で、消費者物価(全国、除く生鮮食品)の前年比がプラスに転じる可能性が高い、との見通しを示した。

 地価の動向について、何人かの委員は、先日公表された2005年の路線価をみると、東京で13年ぶりの上昇となったほか、全国平均でも下落に転じた93年以降最小の下げ幅となっており、地価が下げ止まってきたと指摘した。

2.金融面の動向

 金融面に関して、委員は、極めて緩和的な金融環境が続いているとの認識を共有した。

 金融資本市場の動向について、何人かの委員は、市場の経済・物価情勢に対する前向きな見方が強まる中で、長期金利は上昇しており、短期金融市場のイールドカーブも幾分立ち上がっていると指摘した。複数の委員は、最近の長期金利上昇は、欧米でも生じており、世界的なファンダメンタルズの好転を背景としたものと考えられると指摘した。この間、ある委員は、わが国の株価は政局不透明感を背景に足もと大きく変動しており、今後の動向を注視していく必要があると述べた。別の委員は、堅調な企業収益等を踏まえると、株式相場の基調は底堅いとの見方を示した。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

 当面の金融政策運営について、委員は、消費者物価指数の前年比が小幅のマイナスで推移するもとでは、「約束」の条件に沿って、量的緩和政策の枠組みを堅持することが引き続き重要であるという認識を共有した。

 その上で、複数の委員は、金融システム不安が後退するもとで、金融機関の流動性需要が趨勢的に減少し、資金余剰感が強まっている中、量的緩和政策をより円滑に運営するため、当座預金残高目標を減額することが適当であるとの見解を示した。

 これに対して、大方の委員は、「なお書き」を含めて、現在の金融市場調節方針を継続することが適当であるとの見解を述べた。将来、金融機関の資金需要が一段と低下した場合の対応について、ある委員は、当座預金残高目標の引き下げが必要となる可能性は否定できないが、こうした措置は金融の「引き締め」と受け止められるおそれがあり、景気情勢を踏まえた慎重な検討が必要であると述べた。また、別の委員は、慎重に当座預金残高目標を減額していくことは将来の選択肢の一つと指摘しつつも、景気や物価の現状を踏まえると、現状の金融市場調節方針の継続が適当であると述べた。

 国債発行や税揚げ等により資金不足幅が拡大する中で、7月29日および8月3日から5日にかけて、当座預金残高が目標値を下回ったことに関して、複数の委員は、「なお書き」が適切に適用されたものであり、市場も冷静に受け止めていると指摘した。また、今後の当座預金残高の動向に関して、複数の委員は、金融システムの安定を背景に金融機関の流動性需要が趨勢的に減少する一方、経済・物価情勢の見方の変化を背景に資金供給オペレーションへの金融機関の応札姿勢が積極化しており、これらがどのようなバランスとなり、全体として金融機関の資金需要がどうなるか注意してみていく必要があると述べた。ある委員は、金融機関の応札インセンティブとしては、(1) 流動性需要と(2) 金利観に基づく長めの資金確保ニーズがあり、前者が減少する中でも、長めの資金供給オペレーションで無理に金利をつぶさなければ、後者のニーズはある程度残るのではないかと指摘し、資金供給オペレーションを無理のない範囲で短期化しつつ、当座預金残高を維持することが可能なのではないかと述べた。この間、別の委員は、金融機関の予備的な流動性需要が限定的である以上、そうした資金供給オペレーションへの応札ニーズはいずれ一巡するはずであり、当座預金に対する需要は一段と減退していくとみられると述べた。

IV.政府からの出席者の発言

 会合では、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  •  わが国経済の現状をみると、景気は弱さを脱する動きがみられ、緩やかに回復している。しかしながら、原油価格が引き続き高騰しており、内外経済に与える影響については、その動向を注視していく必要があり、デフレは依然として継続している。
  •  このような経済状況のもと、民間主導の景気回復を持続的なものとし、デフレから脱却することは、今後とも政府・日本銀行一体となって取り組むべき最も重要な政策課題である。
      したがって、日本銀行におかれては、現状の量的緩和政策を堅持する姿勢に変更がないことを、引き続き国民や市場にわかりやすくご説明願いたいと考えている。

 また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  •  景気の現状については、企業部門、家計部門ともに改善の動きがみられ、緩やかに回復している。金融面ではマネーサプライ(M2+CD)の伸び率が1%台で推移しており、物価動向を総合的に勘案すれば依然としてデフレ状況にある。
  •  政府は、平成18年度以降、名目成長率2%程度、あるいはそれ以上の成長経路をたどると見込んだことも念頭におき、経済活力と財政健全化を両立させつつ、民間需要、雇用の拡大に力点を置いて構造改革を加速、拡大し、デフレからの脱却を確固たるものとすることとしている。
  •  日本銀行におかれては、実体経済が緩やかに回復している一方、デフレ克服には結果としてマネーサプライが増加することが不可欠であることから、政府のデフレ脱却への取り組みや経済の展望と整合的なものとなるよう、市場の動向や期待を踏まえつつ、実効性のある金融政策運営を行って頂くよう期待する。また、7月末および8月に入ってから、当座預金残高目標の下限割れが生じているが、出来るだけ早期に解消するよう今後とも努めて頂きたい。

V.採決

 以上の議論を踏まえ、多くの委員は、当面の金融市場調節方針については、当座預金残高目標を30〜35兆円程度とする現在の調節方針について、「なお書き」を含め、現状を維持することが適当である、との考え方を示した。

 これに対し、一人の委員は、当座預金残高目標を現行の「30〜35兆円程度」から「27〜32兆円程度」に引き下げる旨の議案を提出したいと述べた。また、別の委員は、当座預金残高目標を現行の「30〜35兆円程度」から「25〜30兆円程度」に引き下げる旨の議案を提出したいと述べた。

 この結果、以下の議案が採決に付されることになった。

 福間委員からは、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、「日本銀行当座預金残高が27〜32兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

  • 賛成:福間委員
  • 反対:福井委員、武藤委員、岩田委員、須田委員、中原委員、春委員、水野委員、西村委員

 水野委員からは、「日本銀行当座預金残高が25〜30兆円程度となるよう金融市場調節を行う。」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された。

採決の結果

  • 賛成:水野委員
  • 反対:福井委員、武藤委員、岩田委員、須田委員、中原委員、春委員、福間委員、西村委員

 議長からは、会合における多数意見を取りまとめる形で、以下の議案が提出された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、、別添のとおり公表すること。

 日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。

採決の結果

  • 賛成:福井委員、武藤委員、岩田委員、須田委員、中原委員、春委員、西村委員
  • 反対:福間委員、水野委員

福間委員は、(1) 金融機関の当座預金需要は、このところ一段と低下しており、これに合わせて当座預金残高目標を受動的かつ慎重に引き下げていくことは、量的緩和政策のより円滑な運営に資すること、(2) 巨額の当座預金残高維持は、市場機能回復の障害となるほか、現在の超緩和的な状態が永続するとの非現実的な期待を通じて過度なリスクテイクをもたらし、物価安定下での持続的な成長の基盤構築に反するおそれがあること、(3) 「約束」に沿ってゼロ金利を継続することにより、景気回復ひいては小幅の物価下落からの脱却をサポートすることは十分可能であること、から反対した。

水野委員は、(1) 金融機関の流動性に対する予備的需要は趨勢的に減退している状況に変化はないこと、(2) 量的緩和政策解除時の市場の安定を図るうえでは、早めに当座預金残高目標の引き下げに着手することが必要であること、から反対した。

VI.金融経済月報「基本的見解」の検討

 当月の金融経済月報に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が全員一致で決定された。

 この「基本的見解」は当日(8月9日)中に、また、これに背景説明を加えた「金融経済月報」は8月10日に、それぞれ公表することとされた。

VII.議事要旨の承認

 前々回会合(7月12、13日)の議事要旨が全員一致で承認され、8月12日に公表することとされた。

以上


(別添)
2005年8月9日
日本銀行

当面の金融政策運営について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成7反対2)。日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。

以上