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資金需給表等金融調節関連情報の公表方式の見直しについて

2000年 2月14日
日本銀行金融市場局

 日本銀行は、金融市場局が日々公表している「資金需給表」(「資金需給と調節」)の形式を変更するとともに、定例金融調節実施時に行っている「積み上(下)幅見込み額」のアナウンスメントの見直しを実施することとしました。これらの措置は、資金需給表等の金融調節関連情報の公表方式を、より適切でわかりやすい形式に改めることにより、金融調節に関するアカウンタビリティーの一層の向上を図ることを目的としたものです。

 今次見直しの背景および具体的な変更内容等は以下のとおりです。

1.見直しの背景

  • 現行の資金需給表や、「積み上(下)幅」(準備預金残高と残り所要準備額との差額)の考え方は、金融調節による資金供給(吸収)が、すべて所要準備の積み立て額の変動に反映されることを前提としています。しかし、いわゆる「ゼロ金利政策」の下で、従来にない豊富な資金供給を継続し、かつその相当部分が、超過準備額や準備預金制度の非適用先(以下、「非適用先」といいます)の当座預金残高として保有されている結果、次のような問題が生じています。こうした問題は、政策委員会・金融政策決定会合でも議論されました(別紙1)
  1. (1)日本銀行が公表する資金過不足額の予測と実績が大幅かつ恒常的に乖離している。
  2. (2)朝方の定例金融調節時に通知する「積み上(下)幅」の見込み額と実績が大幅かつ恒常的に乖離している。
  • (注)これらの乖離は、(a)資金過不足の予測段階では、前日に非適用先が日銀当座預金に保有した資金や超過準備額を、資金過不足中の財政等要因に余剰要因として算入していますが、(b)実際には、その日も非適用先の日銀当座預金残高や超過準備額として保有されるために、生じているものです。
  • また、昨年末には、コンピューター2000年問題対応として、日本銀行が極めて大量の資金を供給する中で、上記のような乖離が一段と拡大するという事態も生じました。

▼ 資金過不足等の予測と実績の乖離

  • 表
  • (注)積み期とは、当月16日から翌月15日までの1か月間。
  • 以上のような経験を踏まえ、また、今後のRTGSの導入も展望しますと、市場参加者の多様な行動と、それを反映した市場全体の状況を的確に示すことができるような仕組みが、ますます必要になっていると考えられます。

2.見直し措置の内容

(1) 資金需給表の形式の変更

  1. (a)資金需給表を、「資金過不足+金融調節=準備預金増減」という現行形式(別紙2)から、「資金過不足+金融調節=当座預金増減」という形式(別紙3)に改めます。
    当座預金は、超過準備も含めた準備預金残高および非適用先当座預金残高を対象とする広い概念(下式参照)です。従って、新形式の資金需給表では、そうした当座預金全体の増減をもたらす要因のみを「資金過不足」として定義するため、当座預金の中の内訳項目である超過準備や非適用先当座預金残高がどのように増減しても、「資金過不足」の計算には影響を与えません。このため、前述のような資金過不足額の予測と実績との間に生じている大幅かつ恒常的な乖離が解消されます。
    当座預金残高=超過準備額を含む準備預金残高+非適用先当座預金残高
  2. (b)現在、月次データのみ公表している超過準備残高と非適用先の当座預金残高実績について、日次データを当座預金残高の内訳項目として新たに開示します。なお、参考計数として、残り所要準備額実績の公表も継続します
  3. (c)資金需給実績については、これまで当日夕方に速報を、翌日に確報を公表していますが、両者の差異は、表示単位の違い(速報:百億円単位、確報:一億円単位)に過ぎず、確報の情報価値は乏しいと判断されるため、新方式移行後は、翌日の確報公表(別紙2のシャドウ部分)を取りやめます。

(2)「積み上(下)幅見込み額」のアナウンスメントの見直し

  • 上記のように、資金需給表の形式を当座預金ベースに改めることに伴い、即日スタートの金融調節オファー時(朝9時20分が中心)に行っている「積み上(下)幅見込み額」のアナウンスメントは取りやめ、「当日の金融調節」と、その結果としての「当座預金残高の前日比増減額見込み」をアナウンスすることとします。 例:「**オペにより、○○億円の資金供給(吸収)を行います。この結果、本日の当座預金残高は前日比△△億円の増加(減少)となる見込み」
    金融市場調節の基本方針は、政策委員会の金融政策決定会合で決定され、日々の金融調節はそれに定められた誘導目標(現在は「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、できるだけ低めに推移するよう促す」)を達成するように実施されます。現在の「積み上(下)幅見込み額」や、新方式移行後の「当座預金残高の前日比増減額見込み」は、あくまでも日々の金融調節における資金供給量の多寡をみるうえでの参考計数として公表するものです。

3.実施時期

 本件見直しについては、今後システム対応等実務面での準備を整えたうえで、本年3月16日から実施する予定です。

以上

本件に関する照会先

日本銀行金融市場局金融調節課

宮野谷(03-3277-1234)、岩崎(03-3277-1284)


(別紙1)

現行の資金需給表の問題点に関する金融政策決定会合での議論
(政策委員会・金融政策決定会合議事要旨からの抜粋)

99年4月22日開催分

 「 ……何人かの委員から、準備預金制度非適用先に大量の資金が滞留している状況では、日々の金利形成と、資金需給や朝方公表される積み上金額(翌営業日以降積み最終日までの間に積まなければならない一日当りの準備預金額<残り所要額>と比べて、当日の準備預金残高が上回っている分)との関係が、わかりにくくなっているとの指摘があった。……

 このうち、金利と資金需給などとの関係がわかりにくいと指摘した複数の委員は、日々のオーバーナイト金利形成に影響力を有しているのは、現時点では、日銀当座預金全体の金額や準備預金対象行の超過準備額ではなく、毎朝アナウンスされる積み上金額であるとの見方を述べた。そのうえで、それにしても、短資口座に資金が大量に漏出するため、朝方の積み上金額の予想と一日の最終時点(通常午後5時、準備預金制度上の準備預金を確定し、計算する時点)での積み上金額実績が著しく乖離するようになっているため、これまで同様に市場との対話が円滑にいくかどうか懸念されるとの発言を行った。この点は、金融市場調節の透明性にかかわる事柄でもあるので、日々の準備預金残高だけでなく、準備預金制度非適用先も含めた、日々の当座預金残高を公表するなどの工夫を検討すべきとの指示*が、何人かの委員から執行部に対して行われた。」

  • これを受けて、99年4月末より当座預金残高の日次データの公表を開始。

99年8月13日開催分

 「 ……また、この委員は、ゼロ金利政策のスタート後、積み上幅の見込みと実績との間に大きな乖離が生じており、こうした状況が続けば中央銀行のクレディビリティにも影響を与えかねないと発言した。さらにこの委員は、その原因として、資金需給の予想の中に準備預金制度非適用先(短資会社等)への漏出分が含まれているなど、現在の金融調節・金融環境にそぐわない枠組みとなっており、積み上幅や資金需給予想のあり方も含めて全般的に見直しを行うべきと主張した。」


(別紙2)

  • 表

(別紙3)

  • 表