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金融経済月報(基本的見解1)(1998年 5月)2

  1. 本「基本的見解」は、5月19日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、5月19日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

1998年 5月21日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp9805.pdf 386KB)から入手できます。


 わが国の景気は停滞を続けており、引き続き経済活動全般に対する下押し圧力が強い状況にある。

 最終需要面をみると、これまで減少傾向にあった公共投資には、下げ止まりの兆しが窺われている。その一方、純輸出はアジア向けの減少からこのところ頭打ち気味となっており、設備投資は減少傾向を辿っている。個人消費は、悪化には歯止めが掛かってきているが、回復に転じる兆しは窺われない。また、住宅投資も、引き続き落ち込んだ状態にある。こうした最終需要動向の弱さを背景に、在庫が一段と積み上がり、鉱工業生産は減少を続けている。この結果、企業収益が悪化しており、雇用・所得環境の悪化も顕著になってきている。

 このように、生産・所得・支出を巡る循環はマイナス方向に働き始めているが、こうした中で、先般、政府の総合経済対策が決定され、補正予算案などが国会に提出された。今後、財政支出の追加や特別減税等の需要創出効果によって、景気の下押し圧力に歯止めが掛かることが見込まれる。さらに、わが国経済が自律的な回復軌道に復するためには、企業・家計のコンフィデンスが改善することが重要であり、今回の景気対策の効果を含め、経済活動全般の動きを注意深くみていく必要がある。

 この間、物価面をみると、卸売物価の下落が続いているほか、消費者物価は、消費税率引き上げ等の制度変更要因を除いた前年比上昇率が、ゼロ近傍まで低下してきている。先行きについては、国際商品市況など輸入物価からの下落圧力は薄れる方向にあり、また、経済対策の実施に伴って、需給ギャップの拡大にも徐々に歯止めが掛かると見込まれる。しかし、現下の在庫や需給ギャップの水準を踏まえると、物価は、なお暫くの間、全般に軟調に推移する公算が大きい。

 金融面をみると、長短市場金利は、弱めの実体経済指標の発表などを受けて低下傾向を辿り、長期国債流通利回りは過去最低水準を更新している。また、株価も軟調を続けている。この間、ジャパン・プレミアムや国債・民間債の利回り格差には目立った縮小の動きはみられておらず、信用リスクに対する市場の警戒感は依然根強いことが窺われる。

 量的金融指標をみると、マネーサプライ(M2+CD)は、昨年末以降高めの伸びが続いたが、3月以降は伸び率が低下している。また、広義流動性は、昨年央以降の伸び率鈍化傾向が続いている。

 民間銀行貸出は低調な動きを続けている。この間、資本市場や政府系金融機関等からの資金調達は引き続き増加傾向にあるが、民間企業の資金調達を全体としてみると、経済活動が停滞を続けるもとで、増加テンポはかなり鈍化してきているように窺われる。

 民間銀行の融資姿勢をみると、中期的な収益性や健全性の向上といった課題を抱えながら、引き続き慎重な姿勢を維持している。また、資本市場でも、信用力の相違に基づく金利格差の大きい状態が続いている。このため、中小企業などを中心に、企業によっては厳しい資金調達環境が続いており、その実体経済に与える影響について、引き続き注意深く点検していく必要がある。

以上