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【概要説明】 通貨及び金融の調節に関する報告書 衆議院財務金融委員会における概要説明

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日本銀行総裁 黒田 東彦
2022年11月18日

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について、詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

経済金融情勢

まず、最近の経済金融情勢について、ご説明致します。

わが国経済は、資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直しています。海外経済は、総じてみれば緩やかに回復していますが、先進国を中心に減速の動きがみられます。輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加しています。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は横ばいとなっています。こうしたもとで、設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直しています。雇用・所得環境は、全体として緩やかに改善しています。個人消費は、感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加しています。先行きのわが国経済は、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみています。

物価面をみると、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、プラス幅を拡大しています。先行きは、これらの押し上げ寄与の減衰に伴い、年明け以降、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想しています。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくと考えています。

先行きのリスク要因をみますと、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い状況です。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要があると考えています。この間、わが国の金融システムは、全体として安定性を維持しています。先行き、グローバルな金融環境のタイト化の影響などには注意が必要ですが、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有しています。より長期的な金融面のリスクとしては、金融機関収益への下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かう惧れがある一方、利回り追求行動などから、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあります。現時点では、これらのリスクは大きくないと判断していますが、先行きの動向を注視する必要があります。

金融政策運営

次に、金融政策運営について、ご説明申し上げます。

わが国経済は、感染症による落ち込みからの回復途上にあるうえ、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、物価面では、消費者物価の前年比は、来年度以降、2%を下回る水準まで低下していくとみています。

このような経済・物価情勢を踏まえ、日本銀行としては、金融緩和を継続することで、わが国経済をしっかりと支え、賃金の上昇を伴う形で2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指して参ります。

ありがとうございました。