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金利リスクの管理のための諸原則

バーゼル銀行監督委員会による市中協議用提案
(日本銀行仮訳)

1997年 1月22日
バーゼル銀行監督委員会

日本銀行から

 全文は、こちら(bis9701a.lzh 35KB [MS-Word])から入手できます。

プレス・ステートメント

バーゼル銀行監督委員会は、G10総裁会議の了承を得て、本日、金利リスクの管理のための諸原則を盛り込んだ市中協議用ペーパーを公表する。本ペーパーは、銀行がその全ての活動において適切なリスク管理を継続して実行することの必要性を再度強調し、監督当局が銀行の金利リスク管理を評価する際に考慮する特定の合意された諸原則を明らかにするものである。これらの提案に対する、非G10諸国の監督当局、銀行、その他の関心のある主体からのコメントを、1997年4月15日まで募集する。

本ペーパーのテキストは、1月22日より、インターネット上のBIS Web Siteのhttp://www.bis.org/(外部サイトへのリンク)、各国監督当局、ないしは国際決済銀行にあるバーゼル委員会事務局から入手することができる。

1997年1月22日

  • バーゼル銀行監督委員会は、1975年にG10諸国の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会であり、イタリア銀行のDott.T. Padoa-Schioppa副総裁が議長を務めている。同委員会は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデン、スイス、英国及び米国の銀行監督当局ならびに中央銀行の上席代表により構成される。委員会は通常、常設事務局が設けられているバーゼルの国際決済銀行において開催される。
  • 1988年7月に、バーゼル委員会は、G10諸国の銀行の自己資本適性度に関する最低基準について合意し、この合意は1992年末より完全に発効した。1996年1月には、この、主として信用リスクを対象とする枠組みは、銀行のトレーディング勘定におけるマーケット・リスクに対する自己資本賦課を取り込むように改定された(マーケット・リスクを対象とするための自己資本合意の改定)。このことにより、1997年末より、バーゼル委員会により設けられた自己資本規制は、銀行のトレーディング活動におけるマーケット・リスクをカバーすることになる。
  • 本協議用提案は、そのポジションがトレーディング勘定の一部であろうが、非トレーディング活動を反映したものであろうが、金利リスクの管理に当たって、より一般的に適用することができる12の諸原則を提示している。これらの諸原則は、銀行が金利リスク・エクスポージャーを有効に識別・計測し、モニター・コントロールするとともに、取締役会及び上級管理職の適切な監視に服するような包括的なリスク管理手続きを有していることが不可欠であることを強調している。これらの諸原則とは:

A.取締役会及び上級管理職の役割

  1. 銀行の取締役会は、その責任を果たすために、金利リスク管理の方針と手続きを承認するべきであり、また、銀行の金利リスク・エクスポージャーについて定期的に報告を受けるべきである。
  2. 上級管理職は、確実に、銀行の業務構造及び銀行が負う金利リスクの水準が有効に管理され、こうしたリスクをコントロール・制限する適切な方針や手続きが確立されるようにするとともに、金利リスクを評価・コントロールする資源が利用可能であるようにしておかなければならない。
  3. 銀行は、職責が明確に規定されたリスク管理機能を有するべきであり、その機能は上級管理職及び取締役会にリスク・エクスポージャーを直接報告し、かつ銀行の業務系統から十分に独立したものであるべきである。より大規模の、ないしはより複雑な銀行は、金利リスク管理システムの設計と運営に責任を持つ部署を有するべきである。

B.方針及び手続き

  1. 銀行の金利リスクに関する方針及び手続きは、明確に定められ、その活動の性質・複雑さと整合的なものであることが必要である。こうした方針は、銀行のエクスポージャーを連結ベースで、さらに適切な場合には、個別の関連会社のレベルでも取扱うものであるべきである。
  2. 銀行は、新商品を導入したり新たな活動に従事する場合には、これらに固有のリスクを識別し、確実にこれらが適切な手続き・管理に服するようにすることが重要である。主要なヘッジないしはリスク管理のイニシアティブは、取締役会ないしは授権された担当の委員会によって事前に承認されるべきである。

C.計測及びモニタリング・システム

  1. 銀行は、金利リスクの全ての重要な発生源を把握し、その活動の範囲と整合的な方法で金利の変化の影響を評価するような金利リスク計測システムを有することが必要である。システムの基礎にある前提条件は、リスク管理者及び管理職によって明確に理解されているべきである。
  2. 銀行は、エクスポージャーを内部方針と整合的なレベル以内に維持するような業務運営上のリミットやその他の実務上の取扱いを確立し、実施しなければならない。
  3. 銀行は、市場のストレス時──主要な前提条件が崩れるような場合を含む──における損失に対する自行の脆弱性を測定し、その結果を金利リスクに関する方針やリミットの設定や見直しの際に考慮すべきである。
  4. 銀行は、金利リスク・エクスポージャーをモニターし、上級管理職及び取締役会に適時に報告するための適切な情報システムを有しなければならない。

D.独立のコントロール

  1. 銀行は、金利リスク管理プロセスに関し適切な内部管理を行っていなければならず、こうした管理の適切性及び一貫性(integrity)を定期的に評価すべきである。管理手続きを評価する責任を有する個人は、評価対象となっている職務(function)から独立していなければならない。
  2. 銀行は、自行のリスク管理プロセスの適切性及び一貫性(integrity)に関し、独立した評価を定期的に行うべきである。こうした評価は、関連する監督当局が入手可能なものであるべきである。

E.監督当局用の情報

  1. G10諸国の監督当局は、銀行からその金利リスクの水準を評価するために十分な情報を適時に入手するものとする。この情報は、各銀行のポートフォリオ内の満期や通貨の範囲、ならびにトレーディング・非トレーディング活動の区分といった、その他の関連する要素を適切に勘案したものであるべきである。他の監督当局は、同様の情報を入手することが推奨される。

これらの諸原則を作成するに当たり、当委員会はメンバー国における監督上のガイダンスだけでなく、1993年4月に市中協議のために公表された銀行の金利リスク・エクスポージャーの測定に関する当委員会のペーパーに対して寄せられた銀行業界からのコメントを参考にしている。

当諸原則は、その個別の適用は個々の銀行の活動の複雑さやその範囲にある程度依存するとしても、一般的に適用することが意図されているものである。したがって、各国監督当局は、銀行の金利リスク管理をモニターするための自らの監督手法や手続きを再評価するために、これらを活用すべきである。当諸原則は、銀行の金利リスク管理の適切さと有効性を評価するうえで、各国監督当局によって用いられるべき基準を提供するものである。このペーパーはまた、監督当局が金利リスクに関する情報を入手するための基本的なフレームワークを提供しており、こうした情報が入手できれば、銀行が直面する金利リスクの定量的評価のために、監督当局は様々な方法でこれを利用することができる。

1997年1月22日