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金融高度化セミナー「リスク管理高度化と金融機関経営」における大杉審議役挨拶

2005年 9月 9日
日本銀行金融機構局

挨拶に使用した資料は、PDF形式でご利用頂けます。

 金融高度化センター長の大杉でございます。本日のセミナーの本題に入る前に、私のほうから、金融高度化センターについて紹介をさせていただきます。

 私ども金融高度化センターは、去る7月8日の機構改革によって誕生した新しい組織です。7月の組織改革の要点を申し上げますと、お手元の資料の1ページ目にありますように、旧信用機構局と旧考査局が統合されて「金融機構局」という新しい局ができ、その中に「金融高度化センター」が設置されました。

 このような組織改革に踏み切った基本的な考え方は、本年3月に公表した「ペイオフ全面解禁後の金融システム面への対応について」というペーパーの中で詳しくふれています。その要点を改めて一口で申し上げると、先ほど、総裁の福井からもお話し申し上げたとおり、日本銀行の金融システム面の政策の舵を切り替え、これまでの「危機管理重視」から、「金融高度化の支援」に軸足を移すことが適当と判断したということです。この点は資料の2ページにお示ししているところです。不良債権処理が大きく進展し、金融システムが安定性を取り戻しつつある中で、いよいよこれからは、金融機関が創造的な業務展開をしていくことによって、我が国の経済活動を力強くサポートしていくべき局面を迎えています。そうした民間金融機関の積極的な金融機能の発揮を「金融高度化の支援」を通じてしっかりとサポートしていくことが、私ども金融高度化センターに与えられた使命であると考えております。

 このような考え方のもとに新設されました金融高度化センターの具体的活動内容は、大きく分けて3つのものがあろうかと考えております。お手元の資料の3ページ目をご覧下さい。

 第一は、先端的な金融技術に関する調査・研究とその成果の公表です。近年、金融工学の発展とともに、金融機関におけるリスク量の計測技術は目覚しく高度化してきています。私どもといたしましては、皆様方のリスク管理や経営管理の高度化をサポートするために、先端的な金融技術に関する調査・研究を進め、その成果を適宜ペーパーの形で公表していきたいと考えております。去る7月に、金融機構局はリスク管理高度化と金融機関経営に関する3本のペーパーを発表いたしました。今後とも、皆様方の経営高度化にお役に立つような形で、私どもの研究成果を公表してきたいと念じております。

 先端的な金融技術に関する調査・研究ということについて補足しますと、調査・研究の対象として、リスク管理の高度化が含まれることはもちろんです。この面では、上述したような我が国金融システムの局面転換を踏まえますと、貸出はもとより、それ以外の幅広い金融資産や金融取引、——例えば様々なオルタナティブ投資等、——も対象に、その価値やリスク評価手法の開発・向上を図ることが挙げられます。また、私どもといたしましては、もう少し広いスコープで金融高度化を考えたいと思っております。例えば、金融データ交換技術の効率化や情報セキュリティー技術の高度化といった点も研究対象としたいと考えております。さらに、狭い意味での金融技術に限らず、我が国の金融制度や慣行の中に、金融機能の向上という観点から見直すべき面はないか、といった点にも考察を加えていきたいと思っております。

 高度化センターの活動の第二は、セミナーの開催を通ずる金融機関との対話の促進です。本日のこのセミナーが第一回目のセミナーとなります。今回のセミナーは、金融機関の経営者や実務者の方々を対象に日本銀行の講師が語りかける講演会形式のものですが、こうした形式以外に、もう少し人数を絞り込んで意見交換を主体に運営する形式、あるいは、外部講師も交えて私どもと一緒にお話をさせていただき、その後にフリーディスカッションをする形式のものなど、いろいろ工夫しながら実施していきたいと考えております。また、開催場所についても、東京だけではなく、地方における開催も前向きに検討していきたいと思っております。

 私どもとしては、このセミナーを、金融機関の皆様方とのコミューニケーションの一つ重要なチャネルとして位置付けたいと考えております。実地考査が第一のチャネル、オフサイト・モニタリングが第二のチャネル、そしてセミナーが第三のチャネルということです。従いまして、私どもでは、このセミナーを、先端的な金融技術に限らず、既に有用性が確認されているリスク管理や経営管理手法などにつき、地域金融機関も含む幅広い金融機関への普及を図るため、私どもの考え方をお伝えする場として利用したいと考えております。さらにそれだけではなく、金融機関の皆様と共同して金融技術を研究したり、あるいは皆様からリスク管理等についての悩みを率直にお伺いすることにより問題意識を共有し、それを通じて皆様が個々の経営実態に即した処方箋を見出していくことに繋がっていくような場に活用していくことができればと考えております。皆様方もこの趣旨をご理解いただき、建設的な議論を深めていく場として積極的にご活用いただければと思います。

 金融高度化センターの活動の第三は、考査・モニタリング技術の高度化です。先端的な金融技術に関する調査・研究の成果は、私どもの考査・モニタリングにも適切に活用していかなければなりません。先ほど申し上げたような、有用なリスク管理技術や経営管理手法の普及を図るためには、私ども自身が、考査・モニタリング技術のブラッシュアップを不断に図っていく必要があるからです。このために、金融機構局内および支店を対象に研修を企画立案して参ります。

 最後に金融高度化センターの組織について申し上げます。金融高度化センターという名前からは、ある程度大きな規模の組織を想像されるかもしれませんが、資料の3ページにありますとおり、専任のスタッフは私を含め11名しかおりません。金融機構局でリスク管理の調査・研究をしているスタッフ20名の兼務者を加えてもせいぜい30名の小所帯です。このように限られた陣容ではありますが、センター長の私としましては、極力効率的な組織運営を心がけ、日本の金融システムの機能向上のために少しでも貢献できるような成果を上げて参りたいと思っております。

 私からは以上です。それでは本日のセミナーを最後までご清聴いただきますようにお願いします。どうもありがとうございました。

以上